全英名物?バンカーからの水切りショット
“全英らしくない”と評されている今年の全英オープン。その理由は、大会前週からの雨が地面を湿らしてフェアウェイが軟らかくなり、グリーンは時にはピッチマークがついてバックスピンで球が戻るという、リンクスコースではほとんど見ることのできない現象が起きているからだ。
本戦に入ってからも、イギリスらしからぬ天候に恵まれ、穏やかな風と心地よい気温の中で、36ホールの最小ストロークタイ記録がブラント・スネデカーによってたたき出された。優勝者の最小ストローク記録は1993年にグレッグ・ノーマンがロイヤルセントジョージズで記録した267。パー70の今年で言うと、14アンダー以上でフィニッシュすれば新記録達成となる。
大会前、R&Aの会見ではそんなコース状況に対する危惧も呈された。場所によってはプリファードライが適用されるのか?使用しないバンカーは出てくるのか?それに対するR&Aの回答には強い意志が感じられた。「コースは、ゴルフルールが適用される状態だという自信がある。現時点ではプリファードライを適用するつもりはないし、どのバンカーもプレーから除外するつもりはない」。ゴルフの基本である“あるがままの状態でプレーする”という原則。世界最古のオープン競技の威厳とプライドが感じられるコメントだった。
とはいえ、前夜から朝にかけて雨の降り続いた2日目。コース内のバンカーには、いたるところに水たまりができていた。日本だったらどうするだろう?と考えざるを得なかったが、ここでは最低限バンカー内にドロップできる場所を確保し、あとは選手の判断に任せるという態度だった。時には水に埋もれた状態で打つ選手もいたし、1罰打のもとにピンと球を結んだ後方線上にドロップするという処置も取れる。だから写真のキーガン・ブラッドリーのように、バンカー内での水切りショットも生まれるのだ。こんな光景が、今年の全英を象徴しているというのは、やはりちょっぴり違和感があるのだが…。(英国リザムセントアンズ/今岡涼太)
■ 今岡涼太(いまおかりょうた) プロフィール
1973年生まれ、射手座、O型。スポーツポータルサイトを運営していたIT会社勤務時代の05年からゴルフ取材を開始。06年6月にGDOへ転職。以来、国内男女、海外ツアーなどを広く取材。アマチュア視点を忘れないよう自身のプレーはほどほどに。目標は最年長エイジシュート。。ツイッター: @rimaoka