2012年 マスターズ

マスターズが教えてくれるもの

2012/04/09 13:29
大勢のパトロンの中心で感涙にむせぶB.ワトソン。悔し涙を流した松山英樹しかり、全ての選手がオーガスタで貴重な経験を培ってゆく(Streeter Lecka /Getty Images)

暗闇の中で行われたグリーンジャケット贈呈式。2012年の「マスターズ」が幕を閉じた。タイガー・ウッズロリー・マキロイは早々に失速し、優勝争いに加わることはできなかったが、最終日はルイ・ウーストハイゼンのアルバトロスのほか、ホールインワンも16番でボ・バン・ペルト、アダム・スコットの2選手が達成するなど、世界最高峰の舞台で期待されたシーンが何度も繰り返された。

エンディングは涙に暮れた。ウーストハイゼンとのプレーオフを制したバッバ・ワトソンは、ウィニングパットを沈めると、ガッツポーズをする間もなく、初のメジャータイトル獲得に顔をくしゃくしゃにして、家族や仲間たちと喜びを分かち合った。

その約3時間前。松山英樹は、悔し涙を流した。2年連続のローアマチュアを逃したからではなく、不甲斐無い自分のプレーに納得がいかなかった。誰にも見られまい、そんな思いはむなしく、涙腺は決壊した。顔を手で覆い、クラブハウスに駆け込んだ。「準備をして、いろんな試合に出させてもらって、技術を磨いてきた。この舞台では練習してきたいろんなことが試される。去年回ったときは、もっと良いスコアで回りたいと思ったけれど、今はもっと自分の力を磨きたいと思う」。彼の強さはどんな状況にも動じない“鈍感力”。そんな言葉で形容される20歳の、恩師・阿部靖彦監督も初めて見た姿。ここが、オーガスタであるがゆえに流した涙に違いなかった。

石川遼の小学生時代の卒業文集にある「八年後…二十歳、アメリカに行って世界一大きいトーナメント、マスターズ優勝。」というフレーズは、いまでは日本のゴルフファンの多くが知るところになった。だがその歴史的快挙となる壮大な夢は予選2日間で絶たれ、目の前にそびえる高い、高い壁を再認識することになる。

けれど、その作文はこれで終わりではない。当時の石川は最後の一文に、もうひとつ夢を加えている。「ぼくの将来の夢はプロゴルファーの世界一だけど、世界一強くて、世界一好かれる選手になりたいです。」。そう、締めくくっている。

強くなければ愛されない。けれど、「世界一好かれる選手」は、強いだけではない。小学6年生の男子生徒が、そう感じていたのだ。

今大会、予選ラウンドを石川とまわったフレッド・カプルス、松山と同組となったトム・ワトソン。シニアプレーヤーの2人は、毎ホールのティグラウンドとグリーン上で大きな拍手で出迎えられた。彼らの姿に、「世界一好かれる選手」になるためのヒントも隠されていたように思える。

それぞれのゴルファーが、夢までの距離を測る“メジャー”。今年のマスターズもそんな魅力がたくさん詰まっていた。(ジョージア州オーガスタ/桂川洋一)

■ 桂川洋一(かつらがわよういち) プロフィール

1980年生まれ。生まれは岐阜。育ちは兵庫、東京、千葉。2011年にスポーツ新聞社を経てGDO入社。ふくらはぎが太いのは自慢でもなんでもないコンプレックス。出張の毎日ながら旅行用の歯磨き粉を最後まで使った試しがない。ツイッター: @yktrgw

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