ショットからパットまで 鈴木愛を支える個性派スイング
最終日を首位で迎えた「日本女子オープンゴルフ選手権競技」を5位で終えた鈴木愛。宮里藍を越える最年少メジャー2勝目、樋口久子に並ぶ同一年度の日本タイトルメジャー連勝は逃したが、20歳の新星の実力はやはり本物だったことを改めて示した4日間ともいえる。
その強さはもちろんのこと、目を引くのは個性的なスイングだ。バックスイングでは腰の捻転を使ってクラブを低く、インサイドに引き、ダウンスイングではアウトサイド気味に振り下ろす。今週はテレビ解説を務めた森口祐子プロも「2つのプレーンがある感じで、ほかにはいないほどの個性派スイング」という。
「コーチと、最初から体を大きく使うスイングを作ったのでしょう。体をめいっぱい捻りながら、下半身の強さも生かして、上半身の肩や背中の可動域を使って大きなスイングをする。手先に頼らないので、プレッシャーがかかったときにも手首が暴れず安定したボールが打てる確率も高い」と評価。「彼女の体格とパーツの強さもある。誰でもできるかといえば、違うと思います」と続けた。
鈴木がゴルフを始めた小学校5年生当時から指導を続けている南秀樹コーチは、森口プロの言葉にうなずく。
「あの子の場合は体が小さかったので、遠心力を使って打つことから始めました。体への負担もけっこうくるスイングですが、足首がもともと軟らかいし、他の選手と比べてひざのふんばりが強いことも大きいと思います」
インサイドに引いてアウトサイドに戻す動きで、スイングプレーンにズレは生まれないのか。周囲から同様の声を聞くという同コーチは、次のように否定する。「(ダウンスイングは)気持ちアウト目ですが、右の肩口からシャフトを下ろしているので、スローで見るとほとんどオンプレーンなんです」と解説した。
また、鈴木がもっとも得意なクラブと自負するパターのフォームも個性に溢れている。
「テークバックはストレートに引いて、インパクトからフォローにかけては狙うラインよりも右にヘッドが出る」と同コーチ。鈴木が中学生ごろからそのフォームに“なっていた”とのことだが、「直そうか迷いましたが、引っかけることがあってもコスることがまずないので、そのままにしています」という。そんな変則フォームも、今大会を終えた時点で平均パット数は4位(1.7825)。ツアーでも屈指のパット巧者としての地位を築きつつある。
ドライバーからパターまで、すべてが個性派スイングというのも興味深いが、実際に鈴木の台頭を支えていることは紛れもない事実。ファンの皆さんも、そのあたりを注目しながら彼女の姿を追ってみてはいかが。(滋賀県栗東市/塚田達也)
■ 塚田達也(つかだたつや) プロフィール
1977年生まれ。工事現場の監督から紆余曲折を経て現在に至る。35歳を過ぎてダイエットが欠かせなくなった変化を自覚しつつ、出張が重なると誘惑に負ける日々を繰り返している小さいおっさんです。