こんなに多い…女子プロたちの“災い転じて福と成す”
“チクッ”。「CAT Ladies」初日スタート直前の練習グリーンで、東浩子の右腕に痛みが走った。腕には、何かの虫に刺された跡。“ブーン”という羽音を残して消えた虫の正体は分からずじまいだが、東の二の腕には赤い腫れと痛みが残った。ティオフ直前に見舞われたアクシデントに心中は穏やかではない、かと思いきや、なぜか心には光明が見えたという。「私にはちょうどいいかも…」。
「私って、だいたい患っている方がいいんですよね」。なんて悲しいことを…。ただ、過去の実例を聞けば、東の心情にもうなずけるかもしれない。
今年の「ニチレイレディス」では、開幕前に胃腸炎にかかり、練習ラウンドなしのぶっつけ本番ながら、当時の自己ベストとなる20位タイフィニッシュ。さらに高校時代には、あばら骨が折れてドクターストップがかかっていた中で、地方競技で優勝をした経験も持つ。ある意味、悲運(?)のヒロインだ。
そして、そのジンクスは今回も健在だった。蓋を開けてみれば「69」の4アンダーをマークし、首位とは3打差の8位タイと好スタートを切ったのだ。
実は、他の選手についても東のようなケースは多い。今年でいうと、国内メジャー初戦「ワールドレディス選手権サロンパス杯」では、風邪により高熱に冒されていた藤田幸希が「逆に力が抜けてよかったのかな」という首位タイ発進。6月の「サントリーレディス」では、同じく高熱によりプロアマ戦を棄権していた吉田弓美子が、「余計な事を考えず、プレーだけに集中できていた」と2位タイに食い込んだ。
さらにこの日、7アンダー首位タイスタートを切った佐伯三貴も、先週は右手首痛により欠場していた身。「状態が悪いと、自分のプレーだけに集中できるんですよね」。なるほど、これがマイナスからプラスを生むロジックか。
「ベストフィニッシュを狙って、調子によっては優勝を狙っていきたいですね」。ホールアウト後は医務室に直行し、応急手当を受けていた東。まだ残っているという腕の痛みとともに、幸運のジンクスを最大限に活かす。(神奈川県箱根市/塚田達也)
■ 塚田達也(つかだたつや) プロフィール
1977年生まれ。工事現場の監督から紆余曲折を経て現在に至る。35歳を過ぎてダイエットが欠かせなくなった変化を自覚しつつ、出張が重なると誘惑に負ける日々を繰り返している小さいおっさんです。