「私は恵まれている」 森田を支える仲間たち
「ミヤギテレビ杯ダンロップ女子オープン」最終日に2年ぶりの勝利で流した涙は、師匠の岡本綾子をはじめ、同門の服部真夕や表純子ら、仲間たちへの感謝の涙。「みんなに迷惑をかけて、すごく心配をかけて・・・。すいません、と言いたい」。
はにかんだ表情で、森田は言う。「パットが入らない時は、みんなに見てもらったり。(同門では)一番(年齢が)下だから、甘やかしてもらっています」。今週も、開幕前にパットのアドレスの向きを表に指摘されてから復調。2日目にトーナメントレコード「64」をマークし、優勝争いに名乗りを挙げる一因となっていた。
“甘え”といっても、ショットやパットで悩んだ時にアレコレ聞き回るわけではない。困っている様子の森田を、周りが放っておけない。森田には、そんな人柄がにじみ出ている。「みんな優しい人ばかり。みんなが居てくれるだけですごく安心する」。優勝インタビューで感謝の言葉を贈られた表は、「今週はパットについていろいろ言ったり、いつもゴハンを一緒に食べたり、そういうところなんですかねえ? 私も嬉しいです」と、一回り以上も歳の離れた妹弟子の勝利を心から喜んでいた。
そして、何よりも大きい師匠の存在。この日も、ティショットの不調により「パーをとるので必死だった」という序盤戦は、岡本の顔が頭の中に浮かんでいたという。表情は、いつも森田に向けられている「優しい顔」。その岡本とともに築き上げてきたスイングへのこだわりは、人一倍強い。今後の目標を問われ、最初に帰ってきた言葉は「ずっと変わらず、スイングを良くすること。岡本さんみたいに奇麗なスイングを目指したい」。昨年に比べて飛距離は10ヤード伸び、現在は平均260ヤード。美しさと力強さを備えた理想のスイングへ向け、着実に歩みを進めている。
2打差のリードをつけて迎えた最終18番。グリーンサイドには、同門の服部、表、若林舞衣子、青山加織のほか、同門以外の仲間たちも待ち受けていた。「グリーンに上がった時に見えて、とっても嬉しかった。この人たちが居なかったら、ここ(優勝)には来られていなかった。私は、恵まれていると思います」。一般的に個人競技の印象が強いゴルフだが、自身の努力に加えて、周りの多くの仲間たちの支えを自らの強さに変えてゆく。森田は、そんな数少ないゴルファーなのかもしれない。それを素直に認めているところもまた、森田の持っている強みなのだろう。(宮城県利府町/塚田達也)
■ 塚田達也(つかだたつや) プロフィール
1977年生まれ。工事現場の監督から紆余曲折を経て現在に至る。35歳を過ぎてダイエットが欠かせなくなった変化を自覚しつつ、出張が重なると誘惑に負ける日々を繰り返している小さいおっさんです。