2013年 全米オープン

【藤田寛之専属キャディ・梅原敦の全米OPレポート2013<6>】

2013/06/16 10:18
最後の最後まで藤田さんは粘りましたが、決勝ラウンド進出はなりませんでした。次こそは…

あと1ホール。「全米オープン」の決勝ラウンドは、もう目の前に見えていたんけど、僕らの前に立ちはだかったメリオンの18番ホールはとてつもなく大きな壁でした。

運命の5ホールは、14番ホールのアプローチからスタートしました。逆目の嫌なライからピンまで下りの10メートル。藤田さんが完璧なタッチで打ったボールはピンの左下2メートルのところで止まりました。カットラインはわかっていたので、残りホールでもう1つもスコアを落とせません。そんな状況で、藤田さんはそのパットをきっちりと沈めました。

続く15番ホールはティショットを右のバンカーに。万事休すかと思ったけど、僅かにアップヒルだったおかげでグリーンエッジまで持っていけたんです。ただあれが、予選カットを全然気にしなくてもいい位置だったら、おそらく藤田さんはもっと手前に刻んだでしょうね。それだけ、アゴを超えるのに相当な無理があったバンカーショットだったんです。グリーンエッジからマウンド越えになる難しいアプローチは、寄せられるチャンスがほぼなかったけど、藤田さんは上に3メートルのところにまで持っていきました。上からの強烈な下りのフック。チョンと当てただけのタッチでボールは勢いを増してそのままカップに吸い込まれて行ったんです。

あと3ホール。16番はティショットもセカンドショットも共にブラインドになるメリオンの名物ホール。フェアウェイから打ったセカンドショットは僅かに薄く入り、ボールは上の段に上がり切らず下の段まで転がり落ちてピンまで20メートルの距離を残しました。しかしこのパットも40センチに寄せてパーセーブ。

17番の打ち下ろしのショートホールは、いつものティグラウンドの1つ前のティでした。
それでも握ったのは4番のユーティリティ。ハーフトップ気味に当たったティショットはグリーン右手前のバンカーに。ピンまでは15m。グリーンエッジから距離が無い非常に難しいバンカーショットだったけど、このバンカーショットを1メートルに寄せてここもパーセーブ。ついにあと1ホールに迫りました。

そして最終18番は521ヤードの最難関ホールです。でも、ここまでの藤田さんの奇跡的なパーセーブの連続を見ていたら不思議と絶対に大丈夫だと思えました。でもティショットは右のラフへ。ライさえ良かったらグリーンの近くまで持って行けるかも、と期待したけど、ボールは無情にも深いラフの中に。ピッチングウェッジで刻み、残りは109ヤード。アングルも風向きも残り距離も、藤田さんのアプローチウエッジでピッタリの距離でした。

神様、お願いします・・・。

でも・・・藤田さん、アメリカに同行したチームのみんな。そして日本で応援して下さっているファンの皆様全て気持ちがこもった1打だったけど、最後に再び奇跡が起こる事はなかったですね。右上の10メートルはもちろんチャンスが無いわけではなかったけど、藤田さんをしてでもタッチを合わせきれない難しいラインでした。

結果4メートルオーバーし、返しも外れてダブルボギー。藤田さんの今年の全米オープンが終わりました。

もちろん残念だし、悔しいし、やり切れない思いもたくさんあります。でも、何も出来なかったマスターズと違って、この全米オープンはコースとまともに向き合えたような気がします。たられば、は無いけど、もし藤田さんが万全の状態だったら絶対に勝負出来たはず。そんな手応えをヒシヒシと感じ取る事ができた、今日のこの上がり5ホールでしたね。

最終順位に「藤田寛之」の名前は残らないけど、メリオンゴルフクラブにはしっかりと藤田さんの足跡を残してきましたよ。次は「全英オープン」。もうね、経験なんて言ってられない。いろんな事を十分経験してきましたから。今度こそ結果を出しますよ。藤田さんなら絶対にやれるもん。

今回は体調が良くない中で、藤田さんは自分のやるべき事を全てやりきりました。だから次は万全の体調でやらせてあげたいな。お願いですから、少しだけでも藤田さんを休ませてあげて下さい。

レポートは今日で終わりです。最後まで読んで下さり、本当にありがとうございました。また全英オープンもぜひ応援してください!

2013年 全米オープン