パットの名手にショットメーカーはいない!?
デイブ・ペルツがショートゲームのため、悪魔に魂を売り渡したとは言わないが、コルディエラ・リゾートのパー3のコースは、地面が凸凹しているティグラウンドばかりだ。つまり、自分の足より低い場所、時には高い場所にあるボールを打つということだ。ペルツはどんなに不自然なものになろうとも、ゴルファーにすべてのショットに備えて欲しいと望んでいるのだ。究極のところ、ゴルフはレベルを問うゲームではないということになる。
九月半ばのことだった。最初のティーに行く前にペルツは、「アイアンをひとつとパターをとってくれ。私は6番をすすめる」と私にいった。グリーンはすべて前が開けており、ボールを転がしてグリーンまで運ぶことはひとつの選択肢ではある。ルールはこうだ。ティショットがグリーンにのったら、自動的に1ストロークのペナルティになる。そうでなければホールに向かってボールを打ち続け、絶対にグリーン側のバンカーから出てはいけない。セカンドホールにはバンカーがあった。「セベなら3番を使うだろうな」とペルツ。「彼が3番でバンカーショットをしていたのを見たことがあるよ」。これは慰めだった。
セベ・バレステロスはショートゲームのマジシャンであり、ライダーカップチームのキャプテンでもある。ペルツの心は常にピッチングとパッティングで占められているように見えた。ツアーに参加する何百人ものプロたちが、彼のショート・ゲームの授業に注目している。彼はショートゲームの王なのだ。ただ、彼の王国は現在スタン・アトリーに包囲されている。ほかにもショートゲームの権威はいるだろう。しかしアトリーだけがペルツに挑戦する野心を持っている。そしてペルツとアトリーの対比は非常に興味深い。
すると、ヴィジャ・シングやフィル・ミケルソンはペルツパター派で、ボビー・ロックやベン・クレンショーのようなパター使いは、アトリー派だといえる。振り子の教祖、ペルツによると完璧なパットは常に直線状である。
しかしアトリーにとって、パターとは弧に沿わなければならない。バックスウィングでは少し内側に弧を描き、フェースをオープンに持っていく。フェースはインパクトで直角に入り、フォローでフェースはクローズする。
ペルツによれば、本当の振り子ストロークは正しい姿勢からしか生まれない。つまり、手は肩の真下に位置し、パターのヘッドはオープンになっていなければならない。「振り子は最も基本的で、再現可能な動きなんだ」とペルツ。「パターをリリースしろという話は、つまるところ常に右側から落とせといっているのに等しい。そうするにはプレーヤーが前腕をひねり手首を非常に傷めなければならない。タイガー・ウッズはリリースの感じをいつも意識していると言うが、そんなことはしていな。彼が良いパットをしているときには、リリースをしているのではなく、手と前腕を流れに従わせているだけだ」
アトリーのパットは見事なタイミングの賜物だが、パターのオープンとクローズが重要であることに疑問の余地はない。クレンショーが良い例だろう。彼のコーチ、ハーヴェイ・ペニックは、パットストロークはフルスウィングのミニチュアだと考えている。バックスィング時にクラブフェイスをオープンにし、インパクト時に直角にあて、フォロースルーで流れに従わせる。ペルツの言うところでは、これがゲームをシンプルにする方法である。
「しかしゴルフは単純なゲームではない。イアン・ウーズナムのように体を回転させれば、ひどいパターになってしまう。彼はショットにおいて素晴らしいが、パターはひどい。私がゴルフをはじめたころ、ショットメーカーはパットが下手だったし、パットの巧いプレーヤーはショットがだめだった。マック・オグラーディは良いスウィングを持っているけれど、パターは全くだめ。これは彼にとって最悪だった。ニック・プライスはショットメーカーでありつづけたが、やはりパターは巧くなかった。ジョージ・アーチャー、ブラッド・ファクソン、ローレン・ロバーツはパターが巧いが、ショットは凡庸だ。これは彼らが皆ひとつのスウィングしか学んでこなかったからだ。もしドライバーショットをするようにパットをし、パットをするようにドライバーショットしたいと思えば、どちらかがだめになる」
たしかにそうかもしれない。しかしゴルフの美しさとは、私にとって、驚くほど多様なスタイル、幅広く多彩なスィングが生み出されるゲームにある。アーメン、リー・トレビノよ永遠に。
Golfweek