1997年 マスターズ

過酷なピン位置はタイガー対策?

1997/04/11 09:00

オーガスタは冷えこんでいた。午前中はトレーナーを着込んでもまだ寒いほどだった。練習場で調整する選手たちはほとんどがウィンドブレーカーを羽織っていたし、ジャンボ尾崎でさえもスタートしてしばらくはベスト姿。午後になってからは暖かくなってきたが、午前スタートの選手と遅いスタートの選手では、かなり差がついたのではないだろうか。従来は遅いスタートはグリーンが荒れるので不利という説が強かったのだが。今年はトップグループに上がってきた選手はみんな遅いスタートの組だ。

ピンポジションが過酷だった。これまでなかった位置にフラッグが立っている。たとえばジャンボ尾崎。出だし1番で1メートルほどを外してボギーにして、さぁ気をとりなおそうという2番。グリーン右手前に乗せたまではよかったが、アプローチパットがなんと左のエプロンまで転がってしまった。ジャンボが下手なわけではない。ビン位置が難しすぎた。

根拠はないが、圧倒的な飛距離のタイガー・ウッズに対しての、オーガスタ・ナショナルの防衛策だったのではないかという気がする。オーガスタはもともとそんなに距離があるわけではない。タイガーのような選手に対抗するには、グリーンで勝負するしかないのではないか。その結果がこのサディスティックなピン位置になった。そんな感想を抱いてしまった。

タイガーはオーガスタを征服するか?

タイガー・ウッズはそれにしてもすごい。アウトはショットの不調で40だったが、インに入ってから本来の調子をとりもどし10番バーディ、12番もグリーン外から直接ほうりこんでバーディ、13番はイーグル逃がしのバーディ、15番はなんとセカンドにウェッジを使って2オン(大昔は4番ウッドでダブルイーグルと騒がれたホールなのに)して軽くイーグル。17番もバーディ。なんと30でラウンドしてしまった。もし最終18番(これも超絶的な位置までティショットを運んだ。セカンドはウェッジ。こんなところまで飛ばした選手は古今東西皆無)のバーディが入っていたら29!。

試合開始前は「そうはいってもまだタイガーは若い。無理だろう」という感じがあったが、ここまでやられると「やるんじゃないかな」という雰囲気になってくる。個人的な感想だが、エイジンガーはショートゲームがまだ本物ではないような気がするし、ジョン・ヒューストン(18番で隣ホールから直接カップイン)はツキに恵まれすぎた。可能性のありそうなのはポール・スタンコウスキー(今年は強い)とニック・プライスじゃないだろうか。

ジャンボ尾崎にとっては納得のいかないラウンドだったのだと思う。38.36の2オーバー。ホールアウトすると待ち構えていたテレビ局のインタビューを素通りしてし、そのまま練習グリーンへ直行。佐野木キャディとはぐれてしまったため、なかなか肝心のバッグがこなかったのだが、そのまま練習グリーン脇で手ぶらのままじっと待っていた。10分くらいはじっと立っていたと思う。ようやくバッグが到着すると、下りのパッティングを中心に30分くらいは打ち続けていた。記者会見はその練習が終わってから。そもそもが遅いスタートだっただけに、終了したのはすっかり遅い時間になってしまった。

今年のマスターズの話題のひとつはアーノルド・パーマーの復活。練習場で見ていると、人気のバロメーターがよく分かる。選手が練習場に入ってきたとき見物しているギャラリーが拍手をもって迎えるのはごく限られたプロだけで、タイガー・ウッズニック・ファルドグレッグ・ノーマンジャック・ニクラス。このへんの選手にはパラパラと拍手がまきおこる。それだけでも名誉なことだが、その拍手の量と、パーマーが来たときの拍手の量はまったくケタが違う。盛大な拍手。オーガスタのパトロンたちはパーマーを愛している。パーマーは初日最下位。そんなことはどうでもいいのだ。
そうそう、おまけの情報。タイガーが初日に着ていたポロシャツ、あれは日本でも買えるよ。ナイキジャパンから出ていたはずだ。

タイガー・ウッズのドラマチック第1ラウンド>
インに入って劇的なバーディ連取。初日4位としたタイガー・ウッズ
4パット、5パット続出のガラスのようなグリーンで素早くタッチを自分のものにしたウッズ。優勝の可能性をしっかりその手に握りかけている。

1997年 マスターズ