デュバル、エルスも及ばず V.シンがねじ伏せて2つ目のメジャーを制覇。
スタート時点でのアドバンテージは3。決して大きな数字ではない。ビジェイ・シンが途中で崩れ、デュバルが抜き去る、エルスがするすると上がる、あるいはタイガーの猛チャージでもつれる・・そんな展開になっても不思議ではない最終日だった。
実際、タイガー・ウッズはまたもや快進撃を開始した。アウトを終わって4アンダー。バーディもイーグルも計算できるインで更に伸ばすことは十分可能なはずだったが、しかし10番11番と惜しいところで入らない。勝負所の13番では果敢にドライバーで攻めた。15番も攻めた。しかし積極的なプレーが大きく報われることなく、5バーディ、2ボギーの69。通常なら立派な数字だが、追い込むべき立場のタイガーにとっては不満の残るラウンドだった。
アーニー・エルスも静かに静かにスコアを伸ばした。11番で5アンダー。13番で6アンダー。15番で7アンダー。いいプレーだったが、遅すぎた。
やはり優勝に一番近かったのはデビッド・デュバルだろう。アウトではボギーなしの4バーディ。9番では8アンダーまで追い込んだ。しかし2オンを逸した10番で入れ所のパーパットを外して一歩後退。ここから流れが変わってしまったような印象がある。11番ではカメラマンのシャッター音に気を散らされた。チャンスの13番では突風に見舞われ、チャンスどころか完全なミスショットでクリーク入りのボギー。最終18番でセカンドショットを失敗したときは、このクールな男が怒りもあらわに芝生を二度三度と叩きつけた。
ビジェイ・シンが強い選手であることは誰もが知ってはいる。ツアーでの勝利数は8。98年の全米プロチャンピオン。だが、これほどまでにタフなプレーヤーだったとは、認識されていなかったのではないだろうか。3番でいやなボギーとしたもののひるまず、6番8番9番と取り返した。11番で池につかまっても冷静なプレーでボギーセーブ。15番では4アイアンでのミラクルショットでの2オンバーディ。16番でも短いパットを外してボギーにしたが、動揺はなかった。トーナメントリーダーがこんなふうにスコアの伸ばしていったのでは、誰も太刀打ちすることはできなくなる。
最終18番のバーディはおまけのようなものだろう。力の入ったガッツポーズというふうでもなく、勝利のパターから離れた左手が大きくゆっくり天に向かって振り上げられた。これでメジャー2冠。フィジーで生まれ育った37歳の、賞金を82万8000ドル上乗せする堂々たる勝利だった。