【WORLD】R.マキロイ 「最高の一年」を振り返る〈2〉
Golf World(2011年12月19日号)/Rory Mcilroy(聞き手John Huggan)
メジャー王者になって、周囲で態度を変えた連中がいるか聞かれるけれど、わからないな。自分ではオーラを発しているかとか、何か噂されているかなんてわからないからね!ただ、外からの反応は変わったかもね。幸いなことに僕は良い友人に恵まれていて、まだツアー出場権を獲得しようとしていた2007年の時と同様に、皆これまでと何も変わらず付き合ってくれているよ。変わったことと言えば、ファンの反応、もしくは僕のことをあまり知らなかった人達のリアクションくらいだよ。
今年は、自分で言わなくても良いと思うようなことを口走ってしまった。よく考えて発言するよう努力はしているんだけれど、ついつい質問に大して馬鹿正直に答えてしまうことがある。問題は、自分が本当に考えているようなことを、そのままダイレクトに伝えてしまうこと。それには注意していかないとね。今だってたまに正直過ぎるし、思った事をそのまま喋ってしまうから。
今年ニュースになったような発言の大半は、正当な理由があって言った事。いつもそうとは限らないけれど。全英オープンでの悪天候についての発言は、言わない方が良かったと心から思っているんだ。それにキャスターのジェイ・タウンセンドについての発言は問題視された。彼が僕のキャディーであるJP・フィッツジェラルドを批判したんだ。でも、本来なら聞き流すべきことだったのかもしれない。ついつい彼を「出来損ないのツアープロ」と言ってしまったけれど、少しばかり言い過ぎてしまった。あとは、全米プロで、木の根っこの隣にあった球を出そうと思って打った時に負った怪我は恥ずかしかった。言うまでもないけれど、もう2度と同じショットは打たない。見出しにしたくないことでも話題を提供してしまったよ。
それから、全米オープンの直前にハイチに行ったんだ。飛行機からポルトープランスが美しく見えた。ただ、実際はストリートでテント生活を強いられている人が多くて、飲み水も確保されていない。地震の影響で、ゴルフコースに12万5000人も住んでいるんだ。その光景を目の当たりにして、自分がどれだけ恵まれているかを認識させられた。その瞬間からゴルファーとして殻を破れた気がする。それからは、いちいち成績を気にしなくなったね。生きるという末端レベルで考えれば、ゴルフなんて何の意味も無い。ボギーや悪いショットを打ったとしても、何の影響もないからね。
マネージャーをアンドリュー・チャビーからコナー・リッジに変えたことも、自分が思っていたよりも大きな影響があった。それでゴルフの面では好成績を残せたわけだからさ。チャビーと契約している選手が、今年のメジャーで続けて3勝もしていたから、彼との契約を解除した時には、それなりの批判もあったよ。でも、全てが機能し始めるまでにさほど時間は必要ではなかった。チャビーとは今でも良い関係だしね。契約のことは、ビジネスとしての決断でしかなかったから。
キャロライン(ウォズニアッキ)との関係については、僕も彼女も世間から注目されることはわかっていた。そればかりは自分達ではどうにも対応出来ないことさ。彼女はナンバー1テニスプレーヤーで、僕は世界2位(GDO編集部注:2011年の最終世界ランキングでマキロイは3位)のゴルファー。皮肉なことに、僕は彼女が達成したことがないメジャー優勝を経験していて、僕は彼女のように世界1位に到達したことはないけれどね。
昔から自分がメジャー何勝を挙げるとか、優勝を何回するとか、そういう目標は持たずにやってきた。たとえば「2012年にはメジャー2勝、2013年には更に2勝を追加したい」なんていう考えは無い。自分にそれだけの能力があるとわかっていたとしても、そういう風には考えない。目標を設定するのは練習の時だけで、それが本番で勝つ可能性を生んでくれると思っているから。
タイガー(ウッズ)がシェブロンで優勝したね。凄く良い形でフィニッシュしていたけれど、驚きはしなかった。直感と、勝利への意欲だけは何があっても失うような選手じゃないからね。2012年は、復活したタイガーを見たい。僕は世界でもトップ選手と競い合いたい。もしタイガーのような選手と最終日に争えるとしたら、キャリア最大の挑戦になるね。楽しみで仕方がないよ。素晴らしい経験になるだろうし、大きな転機になるかもしれない。そんな経験を来年出来れば最高だ。
僕にとってゴルフとは、一緒にプレーしている選手の妨害をすることじゃなくて、自分自身との戦いなんだ。自分のゲームに集中して、ベストを尽くす。中には邪魔をしてくる連中もいるけれど、上等だよ。僕自身は、誰かに勝つために妨害は必要ないと思っているから。
今シーズン終盤には、12週間連続でイベントに参加して、世界中を回った。疲れも溜まって、出場した全ての大会でコンディションが万全ではなかったよ。でも、自分でやりたくてやったこと。色々なことを経験したくてさ。ただ、もう2度とやらないけれどね!!2、3週間続けて参加するのが限界かな。その後は2、3週間の休みが必要になるけど。
ようやく来年のライダーカップまでのスケジュールが決まったところなんだ。キャロラインと一緒に過ごしつつ、大会までにベストコンディションに持っていけるような予定を組んだ。
少し前に彼女と友人を連れて、ゴルフレッスンをしたんだ。僕は教えるのが上手じゃなくてさ。昔からやってきたことだから、上手く説明が出来ないんだ。それでもレッスンが終わる頃には、彼女は7番アイアンで140ヤードは飛ばせるようになっていた。僕がテニスに挑戦するよりも、ずっと成功する可能性がある。テニスをやる時は、いつも上手くやりたいけれど、そうはいかなくてフラストレーションが溜まるんだよ!
今シーズンを通して自覚したことは、子供達の見本になったということだね。これからは更に自覚していかないとと思っているよ。若い世代に対する影響力は理解しているつもりだし、彼らが思うゴルファーとしての自分、それに自分のゲームがどういうものかもわかっている。誰かに会って、「あなたを見習ってきました」とか、「好きなゴルファー」と言われたらうれしいに決まっているから。
誰も僕を知らない土地に数週間滞在出来たら良いな、と思うことがある。今の自分が手にしている名声について考えると、たまに罪悪感を覚える。そこまでのハードワークを実践しているか疑問に思うからね。身分をわきまえているつもりだ。この間も車を数台売ったんだ。色々な施設に投資はしているけれど、豪華過ぎるものにはしていない。アイルランドの自宅には練習施設も作ったんだ。自分のキャリアにとって必要だと思うことにだけ投資している。
2012年にまた(米国)PGAツアーに参加するけれど、何試合かだけの予定。今はアメリカにも拠点があるし、長期滞在して試合に出るにも都合が良い。だからと言って、ヨーロッパの大会を軽視しているわけじゃないんだ。出来るだけ出場したいとは思っている。ルーク・ドナルドも、欧米の両方で成功出来ることを証明してくれたわけだし。
今年は本当に色々なことがあった1年だった。ただ、どの瞬間も覚えているくらい最高だったよ。
米国ゴルフダイジェスト社提携
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