<佐渡充高の選手名鑑 85>ザック・ジョンソン
■ 燃える!地元大会
今大会は試合名が何度も変更し、現在は「ジョンディアクラシック」として開催されている。“クオッドシティ・クラシック”として開催されたのが始まりだが、“クオッド”とは数字の“4”を意味し、近隣の4つの街が協力、競争しながら繁栄してきた経緯から命名されたそうだ。モリーン市とロックアイランド市はイリノイ州、ミシシッピ川を挟んで北側のベテンフォード市とダベンポート市はアイオワ州に属する。この位置関係から両州の出身選手やゆかりある選手は“地元の大会”と特別な思いで出場し、チャリティ活動も熱心に行い育んできた。生まれも育ちもイリノイ州というスティーブ・ストリッカーも毎年必ず参加し、2009年から3連覇を達成した。昨年は4連覇に挑んだが、同じく地元アイオワ州出身のザック・ジョンソンが同大会で初優勝を挙げ、ストリッカーの4連覇を阻止。しかし地元ヒーローズの優勝争いで大会は大いに盛り上がった。
■ Z.ジョンソンの輝かしいタイトル
昨年優勝を飾ったザック・ジョンソンは1976年2月24日、アイオワ州アイオワに生まれ、同州のドレイク大学の出身者だ。同校のゴルフ部はあまり強くなく、ジョンソンはあまり知られている選手ではなかった。身長178センチ、体重73キロと、ツアー選手としては平均よりもやや小柄だが、獲得したタイトルはなかなかビッグなタイトルばかりなのである。2003年にはウェブドットコムツアーの賞金王を戴冠、最優秀選手賞に輝いた。2004年からPGAツアーに参戦し、2007年には「マスターズ」を制してメジャーチャンピオンに。これまで通算9勝を挙げているベテランだ。
敬虔なクリスチャンゆえ、識別のために、ボールには3つの十字架が記されている。1つは妻キムのため、1つは子供たちのため、1つは両親のために。朗らかで真面目、選手からの信頼も厚く頼れるアニキ的な存在だ。マット・クーチャーとは自宅が近いこともあり家族ぐるみの付き合いで、両家で旅行にでかけるほど親しい間柄だ。
■ 2打罰優勝
そんなジョンソンだが、過去には優勝を逃していたかもしれないほどの大きなミスをしたことがあった。2012年の「クラウンプラザインビテーショナル」で逆転優勝を果たしたが、スコア提出後、最後のパットの際、動かしたボールマークを元に戻さず打ってしまったことに気付いた。誤所からのプレーで2打罰を受け、2位のジェイソン・ダフナーとは1打差で優勝したものの、この時ばかりはさすがに肝を冷やした。表彰式ではさすがに苦笑い。そして「しまった!」のポーズにギャラリーは笑いと拍手で勝者ジョンソンを讃えていた。
■ 活躍を支え続けるオンセットパター
パットマスターで知られるジョンソンのシークレット・マターはオンセットのパターだ。彼の絶対的ヒーローはペイン・スチュワートで、彼を慕う思いから、生前スチュワートが愛用していたオンセットと同じ型のパターを現在も使用している。メリットは「引っかけにくいこと」だという。ヘッドの軌道が“インサイド-ストレート-インサイド”を前提とした場合、インパクト前後のヘッド軌道はストレートなのに、グリップの動きはインサイドアウトからストレートに出るので、引っ掛けにくいということだそうだ。
■ 名コンビ ジョンソン&グリーン
キャディのデーモン・グリーンもジョンソンのゴルフを強力にバックアップしている。実はグリーンもプロゴルファーで、1985年にプロ転向を果たすと、ミニツアーでは通算71勝を挙げている選手。PGAツアーやチャンピオンズツアー、ウェブドットコムツアーでプレーした経験もある。2年前の「全米シニアオープン」でジェイ・ハースらと並んで13位タイでフィニッシュし、ジョンソン顔負けの話題を振りまいた。グリーンはかつてキャディをしていたジミー・グリーンやスコット・ホークからマネージメントを、ジョンソンからはパットを学び、50歳を過ぎてますます選手としても意欲を燃やすツワモノだ。ジョンソンがバーディを決めると、グリーンはチキンダンス(鶏が歩く姿を真似た感じ)で祝福!ジョンソンのマスターズ表彰式前にも、オーガスタのグリーン上で披露したほどツアーでは定番の光景だ。ジョンソンのバーディチャンスには「チキンマン」グリーンのコミカルダンスにもぜひ注目してほしい。