<佐渡充高の選手名鑑 65>ハンター・メイハン
■ 寒暖の差、距離感の難しさ
大会会場はアリゾナ州ツーソン郊外に位置する、リッツカールトンGCダブマウンテン。サボテンの森を縫うように、ホールが続く独特の雰囲気を持つコースだ。全長7,847ヤードと長いが、砂漠地帯のために乾燥が激しく、打球は1~3%も飛距離が伸びる。打球が高く滞空時間の長いショートアイアンほど飛ぶ割合が高いとされる。朝夕の寒暖の差が激しく、霜が降りたり、雪が降ることもあり、気温の差でも飛び具合は変わる。グリーンも小さめで適度なアンジュレーションが効いており、アイアンショットの距離感、正確性、ショートゲームのバリエーション、巧妙なパットがうまくシンクロしないと勝ち残れない環境とコースだ。最近の優勝者を見ても、飛ばし屋の選手よりもショットメーカーが多い。
■ 昨年優勝のハンター・メイハンはツアー屈指のショットメーカー
昨年は優勝候補のロリー・マキロイを決勝で破り、ハンター・メイハンが同大会初優勝を飾った。意外に思うかもしれないが、実はメイハンはPGAツアー屈指のショットメーカーとして知られる選手である。昨年のスタッツを見るとそれは明らかだ。平均飛距離は293ヤードで61位とアベレージを超える程度だが、フェアウェイキープ率では67.7%で16位、この2つのランクの順位の合計で算出されるトータルドライブは2位。つまりティショットがツアーで2番目に上手いということだ。さらにパーオン率は13位で、この3つの分野の順位の合計で算出するボールストライキングでは4位となる。それに加えて、大会週からパットが冴え渡った。クラブ契約のピン本社が会場から車で2時間と近く、パットの調子が良くなかったメイハンは、構えの向きをレーザーで調べたところ3.6メートル先の目標に対して、ヘッドが5センチも左を向いていることが分かった。修正するとパットが面白いように決まりだし自信を深めた。持ち前のショットにパットの冴えが加わり、まさにシンクロ率100%に近い状態だった。
■ サングラス、ダルビッシュ、タイガー・ウッズ
メイハンのトレードマークはサングラスだ。父親が元サーファーで、秘密麻薬捜査官だ。いつもサングラスをしていた父を真似て、メイハンもサングラスをかけるようになった。現在はテキサス州ダラスを拠点にし、通算5勝のうち世界選手権(WGC)は2勝の実績。地元では著名な名士としてチャリティ活動を積極的に行っている。現在、メジャーリーガーとして活躍するダルビッシュが、メジャーリーグデビューを飾った試合では始球式に参加した。タイガー・ウッズに現在のコーチ、ショーン・フォーリーを紹介したのもメイハンだ。そのためタイガーと一緒に練習ラウンドをしたり練習を行うことが多い。世界ランク1位の最長記録保持者のタイガーと行動を共にすることで、勝利のエッセンスや刺激を受けていることも最近の躍進の理由かもしれない。