米国男子ツアー

2022年のPGAツアーにおけるギア10大ストーリー(前編)

2023/01/02 14:40
着用シューズが注目された「マスターズ」

GolfWRX.comは1年を通じてイクイップメントレポートでPGATOUR.comの読者に対し、最新ギアのリリース情報、選手の用具契約、使用ギアの変遷、ツアーにおけるカスタム設計、そしてそれら全てにまつわるストーリーを伝えるべく、東奔西走した。2022年のツアーを振り返り、ギアに関する10大ストーリーを列挙してみよう。

1. ウッズが大きなギア変更を敢行

2022年、タイガー・ウッズは「マスターズ」、「全米プロゴルフ選手権」、そして「全英オープン」の3大会にしか出場しなかった。しかしながら、出場したその3大会の全てで、ギア界のニュースのヘッドラインを飾った。

復帰戦だったマスターズに2021年「PNC選手権」と基本的に同じクラブセットアップで姿を現したが、フットウェアを変えたことで世界に衝撃を与えた。

長年にわたってナイキのゴルフシューズの顔となってきたわけだが、けがとそれに伴う外科的再建のため、フットジョイを履いたのである。この驚きの変更について、ウッズは記者会見で次のように述べている。

「今、僕の可動域はとても制限されている。僕の足にはまだロッドやプレート、そしてネジが入っているので、より安定感のある、これまでとは違う何かが必要なんだ。行き着いた先があれだった。ナイキは長年にわたり、用具提供で素晴らしい仕事をしてくれた。今も引き続き、また安定した状態でスイングができるよう、一緒に仕事をしている。これからも、その作業は続けていくし、近々、解決策が見つかればと思っている」

全米プロには、新しいアイアンとウェッジを携えてやって来た。トゥルーテンパーのダイナミックゴールド MIDツアーイシュー X100シャフトが装着された2本の新しいテーラーメイド P770ドライビングアイアン(2番と3番)をバッグに入れて、初日のラウンドをスタート。MIDシャフトは2022年にリリースされたシャフトであり、彼のテーラーメイド P-7TW アイアン(4番~PW)に装着されているトゥルーテンパーダイナミックゴールド ツアーイシュー X100シャフトに比べ、幾分高弾道かつ高スピン量になるよう設計されている。

しかし、サザンヒルズでの第2ラウンドと第3ラウンドでは、P770 ドライビングアイアンを1本のみ使用し、いつものテーラーメイド M3の5番ウッドをバッグに戻している。また、ウッズはマスターズで使用したMG2 ウェッジの後継モデルであるMG3 ウェッジのメッキなし(56、60度)を実戦投入した。

タイガー・ウッズの使用ギア(Courtesy of GolfWRX)

そして、セントアンドリュースでの全英オープンでは、クラブセッティングに次の4つの変更を施した。

1) テーラーメイド ステルスプラス ドライバー(9度)のシャフトを藤倉コンポジット VENTUS BLACK(6X)に変更
2) テーラーメイド P770の3番アイアンのシャフトをトゥルーテンパー ダイナミックゴールド ツアーイシュー X100 シャフトに変更
3) 60度ウェッジは引き続きMG3メッキなしを使用するも、56度ウェッジはMG2へ再度変更
4) スコッティキャメロンニューポート2 GSSパターのバックキャビティに鉛テープを追加

セントアンドリュースで開催された全英オープンでのウッズの使用ギアは次の通り。

ドライバー: テーラーメイド ステルスプラス(9度)
シャフト: 藤倉コンポジット VENTUS BLACK 6X
3番ウッド: テーラーメイド SIM(15度)
シャフト: 三菱ケミカル ディアマナ D+リミテッド 70TX
5番ウッド:テーラーメイド M3(19度)
シャフト: 三菱ケミカル ディアマナ D+リミテッド 80TX
アイアン: テーラーメイド P770(3番)、テーラーメイド P-7TW(4番~PW)
シャフト: トゥルーテンパー ダイナミックゴールド ツアーイシュー X100
ウェッジ: テーラーメイド MG2(56度)、テーラーメイド MG3 メッキなし(60度)
シャフト: トゥルーテンパー ダイナミックゴールド ツアーイシュー S400
パター: スコッティキャメロン ニューポート2 GSSプロトタイプ
ボール: ブリヂストン ツアーB XS
グリップ: ゴルフプライド ツアーベルベット コード

ウッズは2022年12月のPNC選手権でもギアを調整。息子のチャーリーさんと出場した36ホールのスクランブルの親子タッグで8位タイに入った。

2. J.R.スミスのド派手な紫パター

元プロバスケットボールのスター、J.R.スミスのパター(Courtesy of GolfWRX)

バスケットボール界のスーパースターであるJ.R.スミスは、NBAを引退した後、ノースカロライナA&Tへ入学し、大学のゴルフ部に入った。8月「BMW選手権」のプロアマでプレーしたスミスはフェースに星が刻印され、ワイルドなホーゼル構造と鮮やかな紫色が目を引くカスタムのベティナルディ イノバイ6.0パターで人々をあ然とさせた。

「僕は、自分のゴルフの上達を進んで助けてくれる人々に囲まれた幸運な状況に身を置いているんだ」とスミス。「それで、うまくいっている。仲間の一人が(ベティナルディへ)連れていってくれて、彼は紫(のパター)を持っていた。そこで、僕は彼を出し抜くぞ、みたいな感じになって、ちょっと似せた物にしようとした。それで、2人とも紫にしたんだ」

GolfWRXがベティナルディのトム・ソピックに話を聞いたところ、スミスが自身の38インチパターをあつらえるべく、イリノイ州ティンリーパークにある同社のフィッティングスタジオを訪れたことが分かった。

「彼はゴルフに取りつかれていて、彼の生活における情熱の大部分を占めるまでになったんだ」とソピック。「新しいパターを手に入れた直後、クインティック(パッティング分析システム)で7球連続してパットを打ったところ、完璧な数字が出た。ソール部分の象徴的なスティンガービーは、ベティナルディブランドにとって必要不可欠であり、ザ・ハイブの主要シンボルでもあるんだ」

「彼のパターは一点物であり、1.5度のフェースには星が刻印されていて、J.R.スミスというスーパースターに相応しい出来になっているね」

3. シェフラーがテーラーメイドと契約

シェフラーのドライバー(提供:GolfWRX)

スコッティ・シェフラーは3月に入ってすぐにPGAツアー2勝目を挙げるという、信じられないほどホットなスタートダッシュを決めた(2月「WMフェニックスオープン」、3月「アーノルド・パーマー招待」)。当時、シェフラーは用具契約フリーだったため、何でも好きなクラブを使うことができた。

しかしながら、3月の「ザ・プレーヤーズ選手権」の週に、テーラーメイドと用具契約を結んだことを発表した。シェフラーはその後「WGCデルテクノロジーズマッチプレー」と「マスターズ」を制覇し、この判断の正当性を証明した。

彼はマスターズでの優勝後、GolfWRXのポッドキャストで、テーラーメイドと契約した決断について、次のように説明している。

「何よりもまず(契約の理由は)ドライバーだった」とシェフラー。「僕はもう、しばらく前から(P-7TW)アイアンを使っていたのだけど、(ステルスプラス)ドライバーを冬場に試打したところ、かなり飛距離が伸びた。そこで、自分がこのドライバーを使うのは間違いないし、このアイアンを使うのも間違いないから、何か形にできるかもしれない、という感じになった。このブランドは一貫して使っていたので、もちろん僕は彼らのことを信頼していた。ファミリー、そしてチームの一員になることは、僕にとってとてもクールなことだったので、彼らとうまく行くようにしたいと思い、契約にこぎ着けることができたんだ。僕はこのチームの一員になって満足している」

シェフラーはマスターズ前、特筆すべきフェアウェイウッドの変更を敢行している。長年にわたり13度のナイキ VRプロリミテッドフェアウェイウッドを使っていたが、契約後はステルスの16.5度に乗り換えたのである。

「僕が苦心していたことの一つが、3番ウッドで飛び過ぎてしまい、狙った球筋が出ていなかったことなんだ」と、シェフラーはGolfWRXに語った。「彼らはシャフト(VENTUS)に何かをしたんだ。正直言って、それが何だったか、覚えてさえいないのだけど、何かティッピング(シャフトを短くする)に関することだったね。何インチか短くして、ヘッド周りのウェートを動かし、ロフトの大きなヘッドを使い、それを立てるようにしたんだ。これは、とてもシームレスな移行だった。自分の狙った球筋のショットが打てたんだ。ミスヒットをしても、ナイキよりテーラーメイドの方が、精度が高かったね」

4. トーマスが一点物パターを実戦投入

トーマスのスコッティキャメロン T5 プロト ツアーオンリー カスタムパター(提供:GolfWRX)

ジャスティン・トーマスは、“ナックルネック”仕様になったカスタムのスコッティキャメロンT5プロトタイプパターを使って5月の「全米プロゴルフ選手権」を制覇したのだが、8月の「BMW選手権」には完全に新しいスコッティキャメロンT5プロトタイプパターを投入した。

この新しいパターには“JT”ロゴが刻印された見た目に明らかな装飾上の違いに加え、彼がより自然に両手を下げることができるよう、それまでより半インチ短いという違いがあった。

「僕のパッティングには、(左肩を上げ)少しこうなってしまい、オープンになる傾向があるんだ」とトーマス。「僕はこれまで何度もパトリック・カントレーと一緒にプレーしてきた。見て分かる通り、彼の腕はとても長く、彼のパターはとても短い。僕は、彼の腕とクラブがいかに自然に調和しているか、そして自分はそうなっていないことに気がついたんだ。それが僕の悪癖に何か関係しているのではないかとも思ったんだよ」

「もし、セットアップがもう少し心地良いものになれば、気にすることが一つ減るのは言うまでもないことだから」

公には知られていなかったが、この新しい“JT”パターは、2月から試行錯誤が始まっていたのである。

一年を通してパター変更やカスタムビルドを試したトーマスだったが、結局最後はその年の初めに使用していたスコッティキャメロンX5ツアーマレットパターに戻している。彼は「ヒーローワールドチャレンジ」、「ザ・マッチ」、そして「PNC選手権」で信頼の置けるX5ツアーパターを使用した。

2023年は、トーマスのパターに関する決断がとても興味深いものとなる。果たして彼は“古女房”を選ぶのか、あるいは22年にテストした新しいプロトタイプに落ち着くのか、はたまた全く新しい23年モデルのプロトタイプを引っ張り出してくるのか。

5. タイガースラムのアイアンが競売に

”タイガースラム”達成時に使用していたとされるクラブ(提供:GolfWRX、PGATOUR.com/Golden Age Auctions)

3月には、タイガー・ウッズが“タイガースラム”(2000年「全米オープン」、「全英オープン」、「全米プロゴルフ選手権」、01年「マスターズ」を連続で制覇)を達成した際に使用したクラブがオークションに出品された。

このクラブは2010年にヒューストンの実業家トッド・ブロックによって購入されたものであり、今回初めて、彼がクラブのオーナーであることが明らかになった。これまで、クラブを額縁に入れ、自身のオフィスに飾ってきた。

では、なぜ今になって売る気になったのか?彼は他の誰かにクラブを堪能してほしいのである。

「私はこのクラブを11~12年ほど堪能してきました」「私の人生は退屈なものです。きらびやかなものではないので、このクラブはそれにふさわしい脚光を浴びてきませんでした」とブロックはPGATOUR.comに語った。

(協力/GolfWRX、PGATOUR.com)