12メートルでもOKパー! ミケルソンが思い出の地で語る「全米アマ」
「BMW選手権」が開催されるチェリーヒルズでは、過去に幾多のドラマが生まれている。
「(アーノルド)パーマーが1番でのドライバーショットをグリーンに乗せたとか、(ベン)ホーガンが17番でのウェッジショットで後退したとか、あのコースでは多くの歴史が生まれた。すべて起こるべくして起こった」
フィル・ミケルソンはこう語り、ゴルフ史に残る名場面の1つとされる1960年の「全米オープン」最終日について触れた。パーマーはチェリーヒルズで開催されたメジャー最終日に「65」を記録し、アマチュアとして出場したジャック・ニクラス、そしてベテランのベン・ホーガンを抑え、自身唯一となる全米オープン優勝を果たした。
30年後、ミケルソンは、同じチェリーヒルズでキャリアに残る結果を残した。「全米アマチュアゴルフ選手権」決勝で、高校時代のチームメートであるマニー・ザーマンを下して優勝。ニクラス以来となる「NCAA選手権」と「全米アマ」の同年優勝という偉業を成し遂げた。
ミケルソンは現在フェデックスカップランキング56位。今週のBMW選手権には70位までの選手が出場する。来週開催される「ツアー選手権byコカ・コーラ」に8年連続して出場するには、今週、好成績を収める必要がある。幸い、ミケルソンにはチェリーヒルズで良い思い出がある。「全米アマチュアゴルフ選手権」優勝後、1度だけコースを訪れたことがあるというが、その時はプレーしなかったという。
「24年前にプレーした全ホールを鮮明に覚えている。またあのコースに戻れて興奮しているよ」
ミケルソンは2012年のインタビューで、チェリーヒルズで優勝したときのことを聞かれると、勝利を決めたショットではなく、2試合目の最初のホールで、対戦したジェフ・トーマスに約12メートルのパーパットをコンシードしたことを話した。
「彼との試合は一生忘れない。ただただ、愉快だった。最終的には僕が90センチから1.2メートルくらいのバーディパットを沈めて勝ったんだけどね」と、ミケルソンは当時を回想した。
ではなぜ、そこまで長いパットをOKしたのだろう?
「相手がチッピングに2分くらいかけて、ホールまで12メートルくらいのところに寄せたんだ。また時間をかけていたから『もういいや』と思ってね。結局コンシードして、自分もパットを決めて、次のホールに進んだ。僕が最初の5ホールを勝ったから、それでプレッシャーがかかったのかもしれない。結局は自分が勝ったけれど」
2000年の「全米プロゴルフ選手権」でプレーオフの末にタイガー・ウッズに敗れたボブ・メイは、チェリーヒルズでミケルソンに敗れた1人。準々決勝での17番パー5、ミケルソンは浮き島グリーンでバーディを決めて準決勝に進出すると、1988年の「全米ミッドアマチュア選手権」優勝者であり、後にチャンピオンズツアーで4勝を挙げるデビッド・イーガーに勝利し決勝に進んだ。
ザーマンとの決勝(36ホール)では、折り返しを過ぎたところで3アップとしたが、ザーマンが続く2ホールを連取。パー3の8番ホールでも、アプローチショットを直接カップに入れたザーマンが勝ってイーブンになるかと思われたが、ミケルソンは約6メートルのバーディパットを決めて踏みとどまった。ザーマンは10番で痛恨のボギーを記録。ミケルソンは11番でバーディを奪い、粘る旧友を引き離した。ザーマンは翌年の「全米アマチュアゴルフ選手権」でも決勝に進出したが、ミッドアマチュアのミッチ・ボーゲスに敗れた。
ミケルソンは、マッチプレーによる選手権の難しさをこう語る。
「マッチプレーを6試合も戦うわけだから、トップに立つには運も必要だったのを覚えている。僕も運に恵まれた。18番ホールまでもつれた試合が3戦あって、1アップで勝った。自分も相手もベストとは言えないラウンドが何度かあって、僕はかろうじて勝てたんだ」