“ギフト”をもらったスコット、フェデックスランキングも2位に急浮上
アダム・スコットの友人ジャスティン・ローズが、最終日の72ホール目に3パットを叩いた時、スコットはリバティナショナルGCの設備の整ったロッカールームでテレビを見ていた。その瞬間、スコットは「ザ・バークレイズ」で単独トップに立った。
スコットが練習場へ向かったのは、タイガー・ウッズが18番で27フィートからのバーディトライを数インチ届かず外し、スコットに追いつくチャンスも同時に逃してから約45分後のことだった。スコットはその場面を見る必要はなかった。後になって、「ギャラリーが歓声を挙げなかったからね」と状況を把握していたことを明かしている。
18番ホールで、ゲーリー・ウッドランドがプレーオフ進出のラストチャンスとなる3メートルのパットをカップ左に外した時は、ギャラリーからそれほど大きなどよめき声は上がらなかった。スコットは、普段冗談交じりに「調教師」と呼んでいるキャディのスティーブ・ウィリアムス氏の隣に立ち、練習場の隣に設置された巨大LEDスクリーンでウッドランドの最後の一打を見守っていた。
確かに、スコットは最終ラウンドでやるべきことをした。この日の平均ストロークは同コースのパー71をほぼ1打上回る難しいコンディションだったが、スコットはノーボギーの「66」と怒涛の追い上げを見せ、リーダーボードを駆け上がった。しかし、同時にスコットは通算11アンダーというスコアに驚いていた。昨日までトップだったスコアより1打劣っていたのに、それで優勝に至ったのだから。
「だけど、トップグループか1時間半も前にプレーできたことに差があったと思う。トップの選手たちは一日中プレッシャーを感じながらプレーしていただろうからね」とスコット。「最終ラウンドでプレッシャーがかかれば、どのホールもさらに難しくなるし、どんなショットも遥かに厳しいものになるからね」。
「つまり、僕はちょっとした“ギフト”をもらったような気がするんだ。そして、それをしっかり生かした。それは間違いないね」と続けた。
スコットは、4か月前の「マスターズ」でアンヘル・カブレラとのプレーオフの末、崇拝するグレッグ・ノーマンも成し遂げていない「マスターズ」での優勝を達成した以来となる、今季2勝目を達成した。スコットは当時、「このメジャー大会制覇を飛躍のきっかけにしたい」と話していたが、その後の「全英オープン」で3位タイ、「全米プロゴルフ選手権」でも5位タイの成績を収めた。スコットが偉大な選手になろうとしていることは明らかだ。
フェデックスカップのプレーオフでも、同様のことが起きるだろうか?たしかに、スコットがロケットスタートしたことは間違いない。今大会の優勝でスコットは、フェデックスカップランキング2位に浮上し、首位タイガーとはわずか162ポイント差だ。TPCボストンで開催されるドイツバンク選手権に向けて、勢いが増したことは間違いない。同地は03年の第1回大会でスコットがPGAツアー初勝利を挙げた場所でもある。
「(今回の優勝は)かなり大きいね」とスコット。「ずっとハードに自分を追い込んできたし、ここ数試合のメジャー大会では惜しいところまで行ったけど届かなかった。それでプレーオフに突入した。大きなポイントを獲得することができるし、多くのタイトルが掛かっている。今はフェデックスカップランキングで好位置につけられて、すごく嬉しいよ」と明かす。
「この機に乗じて、勢いのままボストンでプレーしたいね。あのコースは勝った経験もあるし、気に入っている。良いプレーをして上位争いを演じ、また優勝が出来たらと願うばかりだ」と語った。
大会最終日は、自由の女神の眼下に広がるコースで劇的な展開が繰り広げられた。スコットも知るように、この美しいリバティナショナルGCはかつてゴミの埋め立て地だった。何が起ころうと、圏外ということはない。たとえ、“犬”のようにプレーしている時でも、--これは我々の言葉ではなく、スコットの言葉だ--、また残り24ホールで首位と9打差離れていようともだ。
土曜午後のその時点で、スコットは良いフィニッシュをして、フェデックスランキングで落ち込まないようにしようとしていたことを認めた。だが、10番で叩いたダブルボギーと12番でのボギーを挽回するのに、スコットは続く4ホールで3バーディを奪った。「残り半分のラウンドで救われた」そして、「今週を救った」とスコットは振り返る。
スコットも、キャディを務めるウィリアムス氏も、ポジティブでいることの重要性を理解していた。
「スコットは今できる最高レベルのゴルフをする」とウィリアムス氏。「土曜はかなり調子が悪かったけど、1オーバーだった。ともすれば、容易に『75』『76』を叩いたところだったが、不調の日でも試合を何とかコントロールすることがここでは重要になる。勝つためには不調の時こそ大切だ。出場選手は皆、素晴らしいのだから」と語った。
「不調の時もパープレー前後でまとめることができれば、勝つチャンスはある。だが4オーバー、5オーバーともなれば、逆転勝利は不可能だ」と。
とはいえスコットの本音というと、日曜の午後ウェブ・シンプソンとティアップした時、自分が逆転優勝を遂げるとは夢にも思わなかったという。この日、スコットは首位と6打差で迎えていたので、第3ラウンドを「72」と後退したからには、最終日は出来る限り良いラウンドにしたいと考えていたにすぎなかった。
「土曜は上位で迎えたのに、酷いプレーで終わったからガッカリしていた。だからその分は取り戻したいと思っていた」とスコットは明かす。「頭にあったのはそのことだけだった」。
16番で15フィートのバーディパットを決め、首位タイに立った時も、スコットは他の選手がさらにロースコアをマークするだろうと踏んでいた。ローズやウッズ、ウッドランドらは皆狙っていた。だがスコットが最後に打ち勝った。
「チャンスが得られただけでもラッキーと考えていた。今日はあまり期待できないなと思ってスタートしたんだ」とスコットは言う。「良いラウンドが出来たと思ったけれど、優勝できるとは考えもつかなかった。でも上がり数ホールで上位選手は勝機を逃したのだから、今日は僕に絶対ツキがあったのだと思う」と続けた。
スコットは、次の舞台となるボストンのコースでは、ここ3年で7位、8位、5位フィニッシュと、かなりの好成績をマークしている。またここ6年でフェデックスカップランキングの最高位は、07年の12位。現在はそれを遥かに上回る2位という好位置につけている。
「最初のプレーオフ大会で勝利したおかげで、高得点を挙げられたし、今からこの先数週間がすごく楽しみだ」とスコット。「イースト・レイクまで待ち遠しいし、フェデックスカップで王者になれたらと願うばかりだよ」と語った。