勝負の行方は悪天候の最終日へ クーチャーは勝利を手にするか?
By Helen Ross, PGATOUR.COM
最終日を控えた土曜日の晩、マット・クーチャー、ケビン・チャッぺル、カイル・スタンリーらの上位組は、ボブ・ロッテラの名著「ゴルフはパーフェクトなゲームではない」でも読みながら、心穏やかに準備するため、ベットサイドのライトを照らしていたかもしれない。
時速35マイルの強風が吹き荒れようとも、なかろうとも、難しいブルーグラスの芝目のグリーンが待ち構えてようともなかろうとも、ジャック・ニクラスが設計した難しいコースであっても、そうでなくても。
パーフェクトなことなど、何ひとつない。「こんなコンディションでは、スイートスポットでボールを捉えてチャンスを作るしかないからね」と、マット・クーチャーは話した。
幸いなことに、土曜日のクーチャーは好調だった。彼は8アンダーで「ザ・メモリアルトーナメント」の首位に立っており、2打差でスタンリーやチャッぺルが追いかける展開となっている。
しかし油断は禁物だ。世界ランク1位の名手を以てしても、たった状況が大きく変わることを我々は改めて思い知った。土曜日の悪条件の中とはいえ、タイガー・ウッズは「79」という信じられないスコアを記録した。それは彼のプロ転向後、PGAキャリアの中で2番目に悪いスコアだった。特にフロントナインは2ダブルボギーにトリプルボギー1つを含む「44」という散々な出来だった。
タイガーに起こったことは、誰にだって起こり得ることだ。歴史もそれを証明している。最終日の行方は最後まで注意して見守りたい。
「ゴルフは儚(はかな)いスポーツだからね」と、クーチャー。「このレベルでプレーしている選手なら誰もが経験していることだけど、(コツを)掴んだ!と思った翌日に、全てが消え去り、どこかに行ってしまうことはよくある。だからこんなコンディション下では、余計に気を付けないとね。調子がいいと思っていても、あっという間にどこかに行ってしまうこともあるからね」。
土曜日のラウンドをかき乱した寒冷前線は通り抜けたものの、日曜日も変わらず冷たい風が吹きつけそうだ。最終日はさらに、豪雨に見舞われることとなるかもしれない。グリーン周りを含め、コンディションが難しくなることは間違いない。
ひとつだけ、確かなことがある。各選手にプレッシャーがのしかかる最終日のラウンドは、悪天候も相まって、今週、最も厳しい条件下でのラウンドとなるだろう。
「今日のアベレージスコアは、一体どれくらいだったんだろう?ま、雨風がなかったとしても、このコースはとても挑戦的だけどね」と、クーチャー。「しかし今日のような風に見舞われると、ここはPGAツアーの中でも最も難しいコースに姿を変えるね」。
ちなみにクーチャーが気にしていた土曜日の平均スコアは、73.603だった。だからなのだろう。一夜にして首位の座を明け渡したビル・ハースは、土曜日はプレーした実感が湧かなかった、と語った。彼は「76」を叩き、首位のクーチャーに3打差をつけられた。同じく「73」を叩いたスタンリーは、首の皮一枚つながって最終日を迎えることにわずかな望みを感じている。「この状況では最高だよ」と、スタンリーは総括した。
ひょっとすると最終日は、パットに手こずる選手が現れるかもしれない。それは誰も分からない。ハースは明日の展望を語った。「明日はパーフェクトなラウンドは望んでいないよ。良いラウンドを回りたいだけさ」。
加えて、辛抱強さもカギを握るだろう。例えば土曜日の8番で、チャッぺルの放った会心の7番アイアンの一打が、グリーンから20ヤードもショートして、まさかのバンカーにつかまったことを忘れてはならない。思い通りにショットをコントロールできることはなさそうだ。
「何度言ったか分からないよ。『ワォッ。タフだな』ってね」と、彼は振り返った。「ベストショットを打って、思いもよらない最悪のスポットにボールが落ちた場合、自分ではどうすることもできないからね。1フィートでもカップに近付けて、ひとつづつカップに沈めていくだけだよね」。
しかしチャッぺルは、ひょっとしたら土曜の厳しいラウンドを楽しんでいたかもしれない。この日のベストスコアタイとなる「68」を記録し、自身77試合目にして、悲願のPGA初優勝の夢を最終日に託すこととなった。
「そうだね、プライズ・ファイターの気分だね。彼(自分のことを『彼』と三人称で表現したチャッぺル)は楽しんでいたね。ただ悪天候だったので、ボールを打つ時も楽しめていたかどうかは定かではないけどね」。
ところでクーチャーは、ここ最近、最終日に多くの写真を撮られるようなポジションにいることが多い。実際、彼は世界ゴルフ選手権の「アクセンチュアマッチプレー」で、ハンター・メイハンを破って大きな、そして自身5勝目のPGAのタイトルを手にした。この大会の上位10位のリーダーボードに名を連ねている選手のうち、今季優勝をしているのはクーチャーを含めわずか2選手だけだ。そしてもう一人の選手、アダム・スコットには4打のリードをつけている。
しかし、このコースは飛ばし屋にとっては天国のようなレイアウトである。クーチャーのドライビング・ディスタンスは115位だ。このコースでのラウンドを積み重ねながら、クーチャーは飛距離はなくとも確実にカップインさせるアプローチを学んで来た。過去5度の「ザ・メモリアルトーナメント」で、クーチャーは13位を下回ったことはなく、昨年の大会は2位に食い込んだ。
果たして今年、クーチャーはついに優勝を手にするのだろうか?彼は今週、沢山の正しいことを続けてきた。彼のグリーンレギュレーションは8位で、パッティング貢献率は2位、そして距離のあるパッティングカバー率では堂々の1位の値を示している。
彼は先週、「クラウンプラザインビテーショナル」で4日連続で60台で回り、2位という好成績を収めた。だから例え、今週のラウンドがどんな悪条件であっても、彼の名がリーダーズボードの上位にあることは何ら驚きではない。
「今は本当に自信があるよ」と、クーチャー。「先週のいい波を、いい感じで今週に持ち越せているからね。最終日まで優勝のチャンスにつけて、日曜のラウンドを回れるのは楽しみだよ」。