予想外の展開で最終日を迎えるシェル・ヒューストンオープン
この「シェル・ヒューストンオープン」の試合は、大会屈指のレフティ(フィル・ミケルソン)か、もしくはモジャモジャ頭が印象的な北アイルランド出身の男(ロリー・マキロイ)のどちらかが制するかと思われたかもしれない。ところが展開は大きく違った。
確かに、フィル・ミケルソンは同大会2度目の優勝をまだ視界に捉えてはいるものの、現時点でまだ外側からチャンスを伺っているという状況だ。状況は下記の通り――。
・偶然にも3人の禿頭(スチュワート・シンク、ビル・ハース、ベン・クレイン)が並んでリーダーボードの上位を占めている。
・先週のウェブドットコムツアーを欠場し、月曜に出場資格を得たばかりの選手(スティーブ・ウェットクロフト)が、自身初のPGAツアー優勝のチャンスを手にしている。
・ザビエル大学から加わってきた飛ばし屋(ジェイソン・コクラック)
・それに、もう一人忘れてならないのが、数年前に「ぺブルビーチ」で映画俳優ビル・マーレイとともに優勝を果たした男(D.A.ポインツ)だ。
これで全員、挙げただろうか・・・。あとは、第3ラウンドを終えた首位タイのスチュワート・シンクとビル・ハースの後ろに、15人の選手が2打差以内にひしめいているのも言っておかなければならない。ミケルソンもその中にいるのだ。
とんでもない事態だが、高速グリーンと選手たちのスイングを見出して楽しんでいただきたい。最終日のイースター・サンデーは、アメリカ屈指の激戦が見られるだろう。
「このぐらいの混戦になると、他の選手を気にせず自分のプレーに自然と集中できるから、少しやりやすいぐらいだよ」と、語るのはシンク。「シェル・ヒューストンオープン」には3度目の出場で、2009年「全英オープン」以来の優勝を狙う。「首位争いを演じる選手が少なければ、上下に位置する選手との打数が見えるから、少し先のことを考えがちなので、冷静になるよう努めなければならない。しかし、今回のような混戦になると、より自分のプレーに集中しやすくなるので、多少効率も良くなる。大多数の選手は、集中できて、より良いプレーをするよ」と語る。
土曜日の太陽が沈む頃、11アンダーでトップタイに立つシンクとハースは話してくれた。その一打差で後ろにつけているのは、音楽ユニット「ゴルフ・ボーイズ」のメンバーであるベン・クレイン、「AT&Tペブルビーチナショナルプロアマ」で優勝した経験を持つD.A.ポインツ、予選を勝ち上がったスティーブ・ウェットクロフト、ジェイソン・コクラックが並んでいる。
その下の9アンダーで彼等に続くのが、リー・ウェストウッドをはじめ、過去に「マスターズ」を制したアンヘル・カブレラ、「全英オープン」優勝経験者のルイ・ウーストハイゼン、元PGA王者のキーガン・ブラッドリー、そしてバド・コーリーらのグループだ。第3ラウンドを「67」で回ったミケルソンは、現在21位タイにつけている。
「明日は良いプレーをしなければなれない」とハースは話す。彼の父、ジェイは1987年に同大会を制している。「今週はロースコアの接戦になっている。明日は天気が荒れるのかもしれない。嵐が来るかもしれないとも聞いたが、しかし明日は必ずアンダーパーで回らなければいけない。他の選手が後退することに期待はできないよ」。
ハースの父、ジェイが優勝を果たしたのは別のコースだが、ハースは今夜、父とバスケットボール、そしてゴルフの話をしたいという。「多分、辛抱強くプレーしろと、そして楽しめと言われるだろうね」。
いくらか眠れると良いのだが、「首位につけているから、今夜はあまり眠れないかもしれない。どうしたって考えてしまうし、興奮したり、心配したりして、良いプレーをしたいって苛まれるんだ」とハースは明かす。「1位以上はないのだから。そのためにプレーする。だいたい滅多なことじゃないからね。だから(この状態は)有利じゃないのだけれど、これでいいんだ。明日は楽しんでプレーするようにするよ」と語った。
シンクとクレインは今週たくさんの“貸し借り”がある。クレインは仲間と、シンクについて歌っているのだが、「ゴルフ・ボーイズ」の2.0バージョンの映像の歌詞によると、「俺んとこのステューのシンクじゃ蛇口が水漏れ起こしてる」とスチュワート・シンクの名前と掛け合わせて歌っている。また、二人ともが多分にもれず、土曜の「クレイジー・ソックス・デー」に参加している。
シンクがはいていた靴下は、片方が蛍光オレンジでもう片方が蛍光グリーンだ。「10番ホールまで今日が『クレイジー・ソックス・デー』だったとは気がつかなかったよ」シンクは、素知らぬ顔で答えた。とはいえ、ここレッドストーンのコースの最終日が難しくなるのは誰もがわかっている。空が雲に覆われてしまえば、グリーンは日焼けせず、格別に滑りやすくなる。最終ラウンドがどうなるかは誰にも予想がつかない。
上位26人のうち今季勝利を挙げているのは、ミケルソン、ダスティン・ジョンソン、ジョン・メリックのみだが、いずれも自分のゲームに集中し、この激戦に備えるか「オーガスタ」への足掛かりにしようとしている。また、このうち16人は、今年初のメジャー参戦に向けたプレーとなる。さらに、うち6人はツアー初勝利を視野に収めているのだ。
信仰心の強いクレインがイースター・サンデーに勝利すれば、一層特別なものになるかもしれないが、3日目終了時のスコアボードでも並々ならぬ思いをのぞかせている。「今季を語るには早いけれど、この位置につけたことに感謝している。試合中、成長も見られたし、明日への準備は万全だ。とにかくもう1ラウンド回れることが楽しみだ。ワクワクしているよ」と、クレインは語った。