バックナインで池2回 それでも優勝のガルシア「セベ流だった」
「良いプレーをするだけでは、充分ではないんだよ」。テキサス州のTPCフォーシーズンズリゾートで行われた「AT&Tバイロン・ネルソン選手権」で、米国ツアー4年ぶりの勝利を遂げたセルヒオ・ガルシア(スペイン)は、そう言って微笑んだ。「運が良くなくちゃいけないんだ」。
3打差の3位タイから出た最終日、ガルシアはバックナインで2度池につかまった。ティショットを池に入れた11番は、ドロップ後の3打目を2.5mにつけてパーセーブ。2打目をグリーン左の池に落とした14番では、あと一歩でチップインのリカバリーショットでボギーを拾った。
「今日のプレーはセベ流だったと言えるだろうね。ショットの調子はあまり良くなったけど、チッピングとパッティングが素晴らしかった。彼(セベ)の勝利のいくつかは、そういうスタイルだったから誇りに思うよ」。米ツアーの勝利数で、セベ・バレステロスに並んでスペイン人最多となる9勝目をマークした。
“勝つために運が必要”というのは、痛いほど分かっていた。2014年の「トラベラーズ選手権」では、上がり7ホール連続バーディを奪ったケビン・ストリールマンに1打届かず2位。15年の「ザ・プレーヤーズ選手権」では、最終日を「68」で回ったが、「67」のリッキー・ファウラーに追いつかれてプレーオフで力尽きた。
ようやく自分の番が巡ってきた。首位から出たブルックス・ケプカがスコアを落とし、プレーオフではティショットを池に入れて、ガルシアに扉を開けた。「こういうことはたまに起こるけど、今回は反対の立場になれて良かったよ」。優勝決定の瞬間は力強いガッツポーズを作ったが、すぐにその顔はいつもの優しげなものに戻った。
“神の子”と呼ばれた青年も、今では36歳の大人になった。勝利に浮かれたように見えなかった優勝会見は、この日の勝ち方だけが理由ではないようだ。「確かに勝つことは素晴らしいし、最高の気分だけど、最近はそれが世界のすべてではないってことにも気が付いたんだ。他の人を助けたり、球を打つ以外にもできることはたくさんある。一生懸命努力したのにうまくいかなくても、できるだけ受け入れるようにしているし、たまにうまくいく週があるだけのこと」。そう言って達観したような笑みを残した。(テキサス州ダラス/今岡涼太)