2016年 ザ・プレーヤーズ選手権

逃げ切る強さ 世界ナンバーワンの気持ちの作り方

2016/05/16 11:12
第5のメジャーを制したデイは18番グリーンで家族に祝福された

ひょっとすると、松山英樹よりもナーバスになっていたのはリーダーの方だったのかもしれない。フロリダ州で行われた米国男子ツアー「ザ・プレーヤーズ選手権」最終日。ジェイソン・デイ(オーストラリア)が「71」で3日目までのリードを守りきり、通算15アンダーで完全優勝を決めた。世界ランキング1位に君臨する選手がこの第5のメジャーを制したのはグレッグ・ノーマン(1994年/オーストラリア)、タイガー・ウッズ(2001、13年)に続き、3人目となった。

松山との最終組のティオフは午後2時30分。コースに来る前にテレビ中継を眺めていたデイの胸には「いままでの試合で一番の緊張感」があった。エリー夫人にもそう伝えた。2つスコアを落としたフロントナインは、その心理的な要素が悪く作用した。

折り返しの9番(パー5)では、思わぬミスが続いた。2打目でグリーン右のラフまで運びながら、チップショットを連続して失敗し5オン1パットのボギー。だがその直後、デイは自分に言い聞かせた。「落ち着こう。大げさにとらえるな。まだリードしているじゃないか」

TPCソーグラスの9番グリーンから10番ティグラウンドまでは200m以上続く通路がある。その道中の自分との会話は、すぐに効果をもたらした。「9番のボギーパットを入れたのがきょう一番大きかったんだ」。10番で4mを沈め、ようやくこの日最初のバーディ。静かにガッツポーズを作り、バックナインでは300yd前後の飛距離を持つ2Iを操り、「33」でまとめてみせた。

2010年の「AT&Tバイロン・ネルソン選手権」で初勝利を挙げてから、これがツアー通算10勝目。昨夏から出場17試合で7勝を荒稼ぎしている。際立つのが逃げ切りの強さ。54ホールを終えて首位に立った試合は今回を含めて6試合あるが、敗れたのは昨年7月の「全英オープン」だけ。「ぼくはあの週で変わったんだ。最低の気分を味わった」。この条件下ではその後、同8月の「全米プロゴルフ選手権」から5連勝中だ。

後続に逆転を許さない強さは、ウッズが全盛期に誇った。ふたりはいまテキストメッセージで頻繁にやり取りをする仲。「他の選手のことは一切考えず、ピンだけに集中しろ」。スーパースターの教えをデイは忠実に具現化してきた。「世界ランク1位でいることに強いモチベーションがある。タイガーは『復帰したらやっつけてやる』って言うんだ。もっとリードを広げたい」。フェデックスポイントランキングでもアダム・スコット(オーストラリア)を抜いてトップに浮上。メジャー3大会が残る終盤戦も逃げ続ける。(フロリダ州ジャクソンビル/桂川洋一)

2016年 ザ・プレーヤーズ選手権