【藤田寛之専属キャディ・梅原敦の全米プロレポート2013<5>】
トータル7オーバー。予選カットには4ストローク足りずに藤田さんの「全米プロゴルフ選手権」は終了しました。朝からずっと強めの雨が降り続いていたんだけど、午後スタートの藤田さんが練習場に向かう時にはすっかり雨も上がり、最高のコンディションで2日目を迎えました。ただ、藤田さんの状態が良くなかったんです・・・。
練習場からすでにショットは乱れ始めていました。それに加えて試合が始まると、朝の雨の影響で少し水を含んだ洋芝からのショットの距離感が全く合わず、常に苦しい状態でのプレーを強いられました。チャンスと言えるチャンスは全く無かった。これを入れなきゃ終わってしまうというパーパットを入れ続けて気持ちを繋いでいたけど、さすがにここではいつか限界がきます。トータルスコアが5オーバーになった辺りから藤田さんはもう気持ちだけでは球を運べなくなり、一気にスコアを落としました。
それでも上がりの2ホールは両方ともティショットを大きく曲げたところからパーセーブ。あれは、藤田さんの最後の執念だったんじゃないでしょうか。予選落ちはもちろん残念だけど、午後からは雨が上がり、風も微風でグリーンは止まる申し分ないコンディションでした。だから言い訳なんて出来ない。本当なら何かしら理由を付けて、藤田さんがあの位置から落ちるはずがないんです!って言いたいけど・・・。
練習日から良い状態をキープしてそのまま初日を迎えられただけに、何としても決勝ラウンドに進みたかったですね。でもこれがメジャーなのかな。1日、いやたった2ホールでも展開が大きく変わります。選手の調子もそう。キャディのミスジャッジもそう。天候も空気も。あらゆる条件に対応できる能力がないと、ここではすぐに跳ね返されてしまいます。
藤田さんは今年の4大メジャー全てで予選落ちを喫しました。メジャーの決勝ラウンドの雰囲気を1度も味わう事が出来なかったのは残念だけど、自分自身は藤田さんのおかげでこれ以上ない最高の経験をさせて頂きました。ここには国内にだけいたら見えないものがたくさんあるんです。選手ももちろんそうなんでしょうけど、海外メジャーはキャディの“経験値”が一気に上がる。
世界のトッププレーヤー、トップキャディと同じ時間を共有出来るなんて、これほどまでに幸せな事はありません。そもそも、1年間のうちで4大メジャー全てでキャディをした日本人なんてどのくらいいるんだろう? きっと、5人もいないんじゃないかな。だから僕にとってこの2013年は「キャディのグランドスラム」を達成した最高の年。胸を張って日本に帰ります。
個人的な意見になっちゃうけど、今週はジム・フューリックに勝って欲しいな。あのショットは恐ろしかったもん。フューリックならフェアウェイが今の半分しかなくても大丈夫。日本に帰って願いを込めて応援します。このレポートもマスターズから始まり、この全米プロまで4回に渡って書かせて頂きました。
夜遅くて大変な時もあったけど、自分の気持ちやコースの状況を文章にする事で、また新たに見えてくるものがたくさんあったので、書いていて凄く楽しかったですよ。最初からでも途中からでも読んで下さった皆様。本当にありがとございました。また、最後まで藤田さんを応援してくださって心から感謝しております。国内ツアーはこれから後半戦に入ります。藤田さんの前半戦は苦しんだ印象しかありません。海外メジャーで味わった悔しさも含め、後半戦はまとめて取り返しますからね! また応援して下さい。