石川遼インタビュー/夢へまた一歩近づいた石川遼のマスターズ語録
小学生のころから「20歳までにマスターズで優勝する」という大きな夢を抱き続けていた石川遼。2007年、16歳の時に初めて出場したレギュラーツアー「マンシングウェアオープンKSBカップ」で優勝し、翌年1月にプロへ転向。2008年はツアー2勝目を飾るとともに、賞金ランキング5位に入る活躍を見せた。その活躍が「マスターズ」委員会の目にとまり、特別推薦により早くも掴んだ夢舞台への切符。石川が、これまで「マスターズ」について語った1つ1つの言葉を振り返り、奇跡的とも言える“Road to masters”を辿った。
■ 2008年1月10日 プロ転向会見~シーズン開幕
日本中の注目を浴びた石川のプロ転向会見。まだ米国ツアーとは無縁の時期だったが、「マスターズで優勝したい」と、英語で遠慮がちに夢を語った。だが、開幕戦「東建ホームメイトカップ」で堂々の5位タイフィニッシュ。翌週の4月22日に行われた「2008 ゴルフダイジェストアワード授賞式」では、「ゴルフダイジェストさんの漫画『千里の道も』で、主役の坂本遼くんが“マスターズ”で活躍中ですが、僕もいつかは“マスターズ”の舞台に立てるように頑張りたいです」と、自らの将来像を漫画の主人公に重ね合わせていた。鮮烈なプロデビューは、ファンや関係者も石川と同様に、オーガスタでプレーする若きスターの姿をイメージしたに違いない。
■ 2008年11月23日 「ダンロップフェニックストーナメント」~シーズン閉幕
11月上旬の「マイナビABCチャンピオンシップ」でツアー2勝目を挙げ、海外の強豪が出場するビッグトーナメント「ダンロップフェニックストーナメント」でも単独2位に入り、年間獲得賞金1億円突破が当確する。「今週の僕のプレーがマスターズ委員の方の目にとまってくれたら良いのですが・・・」。この時点で賞金ランク5位に食い込み、世界ランキングもグングンと上昇。いよいよ「マスターズ」出場も現実味を帯びてくる。だが、その後は上位との差を詰め切ることができず、最終的には賞金ランク5位でシーズン閉幕。世界ランキングの資格でも「マスターズ」出場権を獲得できず、あとは推薦出場を待つのみとなった。12月8日に行われた「ジャパンゴルフツアー表彰式」では、「出場はしたいけど、ここからが遠いと思う。今シーズンはランキングが大きく浮上する大会で上位に入るラッキーもあった。そのラッキーを活かして(マスターズへの)招待状が届く可能性はあるかもしれないけど、もし来なくてもやれることはやりましたし、また再来年に出場するチャンスはあると思います」と、来年への再チャレンジを視野にいれつつ神頼みの心境を語っていた。
■ 2009年1月23日 「トランジションズ選手権」出場会見
だが、年を跨いだ1月22日、石川の元に夢のような朗報が飛び込んだ。電話の向こうから、「マスターズ」委員会から英語で“あなたをマスターズへ招待します”という言葉。翌日に開かれた米ツアー「トランジションズ選手権」推薦出場の会見では、まさに「マスターズ」一色となり、「まさか電話が掛かってくるとは思ってなくて、嬉しいサプライズというか緊張で無表情のまま笑顔になれなかったけど、切った途端、みんなから良かったねって言われて。でも、まだ実感は沸かないです。オーガスタで一番楽しみにしているホールは12番パー3。見てみないとどう感じるか分からないけど、中嶋(常幸)さんに『自分の持っているものをぶつけていって、どう感じるかが大事だ』と言われました。歴史やコースを知っておくことは大事だけど、色々想像し過ぎずに、自分なりの考えで感じたままプレーしたいですね」と、喜びに沸いた会見となった。
■ 2009年1月27日 「マスターズ」出場会見
「マスターズ」招待の連絡が届いてから、「招待状が届くのが待ち遠しくて、毎日ポストが気になっていました」と振り返る石川。25日、ついに招待状が実家に届き、「包みを受け取ったのは母です。開ける瞬間は家族のみんなが見守ってくれていて、開けるまでは信じられない気持ちでした。招待状を見た時は、すごく重みを感じました。嬉しさのあまりに何も言えず、笑顔にもなれませんでした。嬉しさを通り越してどう表現して良いか分からなかったけど、こうして形として、文字として招待状が手元に届いて心の底から感動しました」と、笑顔で心境を語った。「出場選手の中で、心技体すべてで僕が一番劣っていると思うけど、初めての出場だし、何も気負うことはないと感じました。とにかく自分の持っているものをすべて出したいです。日本ツアーと同じように、1日バーディを4個以上獲ろうという気持ちでオーガスタをプレーしたいと思います」。初めて具体的な目標を掲げ、半信半疑である自らの気持ちを無理やりに奮い立たせているようにも見えた。
■ 2009年3月12日 「マスターズ」に向け再渡米
2月開催の「ノーザントラストオープン」で米国PGAツアーデビューを飾った石川だが、予選カットラインに3打及ばずに予選落ち。レベルの違いを痛感してのホロ苦い結果に終わったが、反省を糧に練習を重ね、3月12日に再渡米した。「トランジションズ選手権」、「アーノルド・パーマーインビテーショナル」の2試合を経て、ついに4月9日に「マスターズ」開幕を迎える。「(オーガスタの)1番ティに立った時は、数え切れない程の人に感謝していると思います。多分、プレーしながらも幸せだと感じると思います」。大会史上2番目の若さで出場を果たす石川が、どのような新たな歴史を刻むのか。今から期待に胸が膨らむ。