米国男子ツアー

マスターズコースプレビュー

2002/04/11 09:00

第66回を迎えた今年のマスターズでは、延長されたコースの長さが難しさを表すわけではない。オーガスタ・ナショナル独特のレイアウトにさらに長さが加わったということだけが強調されるが、ロングヒッターにとってボールの落下地点がわずかに「受けて」おり、2打目に理想的な位置を確保するのは難しくなっている。一方で、ショートヒッターはより水平な地点にボールをおけることになる。アップスロープは緩やかなものに改修されているのである。コース延長を「タイガー封じ」と評したチャールズ・バークリーには申し訳ないが、そういうことではないのだ。オーガスタ・ナショナルで距離のでるプレイヤーが有利なのは、これ以上ないほどにやっかいなグリーンに打っていくには高い弾道が求められてくるからだ。

皮肉なことと言えそうだが、延長の結果として起きるのは全体のスコアに大きな開きが出るということだろう。コースの改修に関してこれだけ盛んに取りざたされても、優勝スコアは近年のアベレージを上回ることはなさそうだ。過去10年間の平均優勝スコアは276、12アンダーである。
しかし、通常の試合とは違って不釣り合いなほどに下位にオーバーパーの数字がたくさん並ぶのはほぼ確実であろう。そして今年のオーガスタではかつてなかったほど、飛ばし屋たちが上位に名を連ねることになりそうだ。

確認しておこう。コースはパー72。全長7,270ヤードでプレイされる。去年は6,985ヤードで285ヤードの延長だ。1番、8番、そして18番ホールでフェアウエイバンカーが利いてくる。バンカーを避けるのは(言い換えれば、ティショットでバンカーをキャリーで超えるのは)難しくなった。
7番、9番、18番には新たに木々が植えられてティショットの落としどころが狭くなっている。18番のグリーンは大きくなり、ホールの位置設定によっては難しくされうる。ショットの角度の変わったホールが全部で9つある。トム・ファズィオ(Tom Fazio)の指揮の下でその改修作業が行われた。ファズィオのデザインティームは1990年代に入ってからオーガスタ・ナショナルの競技委員との連携作業を続けてきた。

すでに数年間にわたって行ってきたことだが、ファズィオたちは今回のマスターズの最中にもドライヴァーショットの飛距離を測定し、落下地点の設計を練って、今後のさらなる改修の準備をすることになっている。

ワシントン・ロードの神聖なる地、オーガスタ・ナショナルに加えられた最新の改修は、去年、トーナメント委員長のウィリアム・"フーティー"・ジョンソン(William W. "Hootie" Johnson)によって発表された。かつてロバート・タイアー・"ボビー"・ジョーンズ(Robert Tyre "Bobby" Jones)とアリスター・マッケンズィー(Alister MacKenzie)が1930年代初頭に想定していたべーシックなショットバリューと戦略を継承しつつ、現在のプレイヤーたちの闘いの場にふさわしいレイアウトを保つことが狙いであると彼は言った。

そのとき公表されたダイアグラムは、抜本的な改修の行われるいくつかのホールについての改修が何を意味するのかを表している。プレイヤーは最初のホールから過酷なティショットを要求される。右のフェアウエイバンカーを超すには300ヤードのキャリーが必要だ。しかも、距離が長くなったと同時に、それよりもコースを難しくしたのは、ティショットの落下地点が受けているように手直しされたことである。
1番ホールでは右フェアウエイバンカーの手前や左側がそうだ。

ほかに3つのパー4が延長され、同様な改修を施されている。410ヤードの7番ホール、490ヤードの11番ホール、465ヤードの18番ホール。ティショットの落とし所で前方へ「キック」をもたらしていた傾斜がなくなったことで、水平な場所までボールが転がってくれるという望みは潰えた。しかし一方で、ボールを横方向に跳ねさせていたフェアウエイ上のうねりや、あるいはアプローチの際にグリーン面の一部を見えなくさせていた高みが取り除かれてフラットになった。

コースの若干の延長という部分にとらわれていると、そうしたささやかな、しかし同じくらいに決定的なコースの手直しが見過ごされてしまう。1934年に初めてマスターズが開催されて以来、そうした改修はつねに行われてきているのである。ゴルファーやコース設計を学ぼうとするものの中にはそうした改修を、貴重なマスターピースを台無しにしてしまうことだとして反対する者もいるが、彼らは見過ごしている。

コースはすでに何年にもわたって大規模に変わってきており、今回のトム・ファズィオに至るまでに作業にたずさわってきたのはペリー・マクスウエル(Perry Maxwell)、ロバート・トレント・ジョーンズ・Sr.(Robert Trent Jones Sr.)、ジョージ・カッブ(George Cobb)、ジャック・ニクラス、そしてボブ・カップ(Bob Cupp)といった多くの設計家たちなのである。

そうした過程で9ホールが大きく変貌してきた。7番ホールと10番ホールのグリーンはそれぞれ30ヤード奥へ移設され、11番ホールには池が造られた。13番グリーンをガードしていたクリークは中から打てるように改修され、16番ホールは移設されてまったく新たな姿を見せている。そして18番ホールには1967年にジャック・ニクラスという若くて長打を放つプレイヤーを封じるため2つの大きなフェアウエイバンカーが造られ、ドライヴァーを飛ばして短いアプローチを残すという攻め方ができないようになっていた。

いまだ議論を呼ぶ最も大きな変更点は、1981年のマスターズ開催に先立ってオーガスタ・ナショナルのバミューダ芝のグリーンがベントグラスに替えられたことだった。とてつもなく早いグリーンになったおかげで、その後数年間にわたってグリーンの高低差を削らざるをえなかった。

コースの難易度を高める作業が加速されていったのはタイガー・ウッズが数々の記録をうち立てる勝利を飾った1997年からである。ウッズはすべてのパー5で2打目をショートアイアンでグリーンに乗せ、18アンダーの270というスコアで優勝したのだった。 3.5センチの軽い「セカンドカット」のラフが設定され、木々が植えられ、ティーが後方に下げられた。コースの強化が緊急性を帯びてきたのはここ2、3年、ボールとクラブの新たなテクノロジー、そしてプレイヤーの体力向上による飛距離の急激な増大によってのこと。
去年の最終日にフィル・ミケルソンは78ヤードのアプローチをロブウエッジで打ったが、そんなことは今年は起こりえないだろう。新しいティーは60ヤード後方にある。ミケルソンが先日、18番をプレイしたときのアプローチは188ヤードだった。

全長のわずか4%にあたる285ヤードが延長され、長さでは他のトーナメントコースと並んだ。プレイヤーのドライビング・ディスタンスの方はPGAツアーのベイヒル・インビテーショナルまでの平均が277.5ヤード。1992年の260.5ヤードから比べると6.5%の増大であり、1997年の267.6ヤードから比べると3.7%の増大である。オーガスタ・ナショナルが長くなったと言っても、PGAツアーの基準からするとかなり控えめであると言えよう。

おそらくコースに対する最大の変化というのは、1番ティーにあがるときのプレイヤーの気持ちだろう。コースの物理的な変化は数字以上の圧力をもってプレイヤーの心に作用する。飛ばさなくてはならないという気持ちは彼らを緊張させるだろう。何よりもそれこそが、マスターズの勝利の行方を決める最大の要素となるだろう。

By Bradley S. Klein(ジョージア州オーガスタより;GW)