米国男子ツアー

スチュアート・アップルビー「悲劇」からの完全復活

2004/01/13 09:00

25歳でPGAツアー初優勝を飾ったオーストラリア出身のスチュアート・アップルビー。才能に満ち溢れた彼を誰もが同郷ということもあって新しいグレッグ・ノーマンの誕生だと期待した。「ホンダ・クラシック」優勝の翌年もケンパー・オープンで優勝するなどアップルビーの未来は輝いてみえた。しかし1998年の全英オープン直後、悲劇は起こった。

最愛の妻ルネーさんと、2度目のハネムーンをパリで過すことにした。車から荷物を取り出そうとしたルネーさんは交通事故に遭い、2台の車に挟まれてしまった。アップルビーの目の前で起きた事故。懸命な延命処置にも関わらず、ルネーさんは亡くなってしまった。

事故から2週間後、アップルビーは悲しみをこらえつつ、全米プロ選手権に出場した。涙の記者会見で、アップルビーは「皆さんの温かい支えに感謝します。ただ、心の中に大きな穴が開いてしまって、どうにもならない。夜は悲しみに押しつぶされて眠れません。最も大事な人を失うと、どんな些細なことでも辛いのです」

その年末、母国オーストラリアの大会で優勝。少しずつ元気を取り戻しているかのように見えた。また「プレジデンツカップ」での活躍、翌99年には「シェル・ヒューストン・オープン」で優勝し、復活したかに思えた。しかしアップルビーの左手薬指にはまだ結婚指輪がはまったまま。心の傷は癒えていなかった。

2001年シーズンには、トッププレーヤーたちに水をあけられ、ランキングも55位と低迷。優勝できない年月が4年も過ぎてしまった。しかしやっと、2003年の「ラスベガスインビテーショナル」で念願の優勝。さらに昨年はアップルビーが再婚し、プライベートでも新しい人生をはじめた。亡き妻ルネーさんの記憶を大事にしながら、再婚に踏み切ったのだ。生まれ変わったアップルビーは、ここ6試合で優勝2回、トップ5入り4回、平均スコアが68.16と再び、トッププレーヤーたちの仲間に戻ってきた。