2022年 マスターズ

中島啓太は涙の予選落ち「すごくつらかった」 事前準備に胸を張る

2022/04/09 10:13
涙とともに初出場の大舞台を去った

◇メジャー第1戦◇マスターズ 2日目(8日)◇オーガスタナショナルGC(ジョージア州)◇7510yd(パー72)

黒いマスクの上の目は涙でいっぱいになっていた。スコアを提出し、インタビューエリアに向かおうとした中島啓太(日体大)はきびすを返して建物の中に戻った。初日イーブンパーの滑り出しから「79」が悔しくて仕方がない。もう一度、外に出た後も、声は震えていた。

強風に苦しめられた

決勝ラウンド進出、2011年の松山英樹以来となる日本人ローアマチュア誕生の期待も背負ったこの日は、スタート時から強風が吹いた。1番でボギーを先行し、チャンスをつくれないまま迎えた8番(パー5)で、3Wでフックボールを打ちに行った2打目を引っかけて左のブッシュに入れ、アンプレヤブルを経てボギーにした。

難度の高い後半10番はグリーン右のバンカーから、11番は手前のフェアウェイから約40ydを寄せて1パットパー。我慢強さを見せたところで、思わぬトラブルが起こった。アーメンコーナーの12番(パー3)、8番アイアンでの第1打はグリーンを大きく超え、花が咲き乱れる茂みに入った。この日2回目のアンプレヤブルを宣言し3打目も左足下がりの崖のようなライから前に進めるのが精いっぱい。4オン1パットのダブルボギーをたたいた。

突如として予選カットラインの下に後退した。14番、フェアウェイから「完璧だった」という9番アイアンでの第2打はピンが立つ奥の段にわずか1yd届かず、傾斜で花道に戻ってきた。アプローチも寄せきれずボギー。「1フィート、2フィートという世界でバーディがボギーになる」。さらに15番(パー3)は3パットで2連続になった。

貫いた準備に悔いはない

グリーン上でチャンスがほとんどなかった18ホール。「最初からすごくつらかった。こんなに難しいんだなと」。周囲のサポートを思うと泣きたくなった。「心技体、2カ月間やってきて準備は良くできた。全部がもっとレベルアップしないとダメ。やってきたことは完ぺきで、みんなを信じてこられた」

ナショナルチームのガレス・ジョーンズ・コーチをはじめとしたスタッフと綿密にプランを練り、準備に沿ったプレーができた自負がある。「もちろん風は難しい方向から吹いていたけれど、キャディのクレイグ(・ビショップ)さんと思った番手、狙ったターゲットは間違っていなかったと思う」と胸を張れる。アマチュア選手としてメジャー3大会に出場する異例のキャリア。「まだまだ挑戦は始まったばかり。全米オープン、全英オープンに向けてチーム皆で準備できたらなと思います」と松山も、金谷拓実も踏まなかった道を歩く。

「後悔するような一打はなかった」。だから、きっと涙はすぐに乾く。(ジョージア州オーガスタ/桂川洋一)

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