クラブの手渡しもひと苦労 コロナ禍でツアーレップの仕事にも変化/チーム松山リポート
新型コロナウイルス感染拡大の影響で中断していた米男子ツアーが再開して間もなく2カ月が経とうとしている。松山英樹は今週から「WGCフェデックスセントジュード招待」、「全米プロゴルフ選手権」に出場。夏場のビッグトーナメントを戦うが、ツアーは依然として無観客での開催を続け、各試合で検査や隔離体制を続けている。未知の体験、試行錯誤の連続…参戦7シーズン目にして味わう“非日常”を、松山をサポートするスタッフたちがリポートする。
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ツアーレップという職業がある。ゴルフトーナメントに帯同し、会場内でクラブやボール、ウェアやシューズなどのギアを選手に供給する仕事を担う。選手の要望を聞き入れながら、クラブを選んだり、調整したりするエキスパートたち。松山が契約する住友ゴム工業(ダンロップ)の宮野敏一さんもそのひとりだ。
感染拡大防止策として、場内に入るスタッフ人数を制限されるのはツアーレップもまた同じ。PGAツアーでは年間、各メーカーで最大20人近くが入場パスを支給されているが、コロナ禍では現状、1大会あたり各社4人までしか会場に入れない。それもダンロップをはじめ、全国を回る巨大なツアーバン(室内でクラブ調整の作業ができる大型車両)を所有するメーカーに限られており、バンがない車については1人に限定されるという。
仕事の様子も様変わりした。道具を選手とやり取りするのにも制限がある。「たとえば、ボールをプロに渡そうと思えば、以前はロッカールームに入り、各選手のロッカーに新品のボールをダースで置いていました。ですが、今はロッカーに入ることが許されません」。選手がツアーバンに立ち寄ることもできず、ギアの受け渡しは基本的にコース内に設けられた「クリーンステーション」に預けることで行われる。
また、ツアーレップはこれまで主に練習場で選手とコミュニケーションを取りながら、クラブの選定、調整の依頼を受けていたが、今はドライビングレンジに入場できない。コース内を歩く時も選手に紐づいた追加の入場許可書が必要だ。
「『これぞPGAツアー』というような、新品の試打用パターがパッティンググリーンにズラリと並んでいる様子も、いまはありません。必然的に選手はクラブを替えにくい状況にある。新しい道具との“出会い”も少ない。本来は新製品のテストも進めたい時期なのですが…」(宮野さん)。契約プロのフォローが一番の仕事だが、会場は契約外の選手に対しての“営業活動”の場でもある。それもままならない。
ところで、各メーカーのツアーレップたちの間ではいま、オリジナルのマスク着用が流行中だとか。ダンロップはお馴染みのスリクソン、ゼクシオのロゴを入れて作成。テーラーメイドなどは首まで隠れるフェイスシールドタイプもあるという。ちなみに、これらはみな市販する予定は一切なく、まさにギョーカイの内輪の楽しみ。世界的な困難に直面しても、遊びゴコロを忘れないところがアメリカの良さのひとつかも。