決して立ち止まってはいない 石川遼2つの“前進”
◇国内男子&アジアンツアー◇SMBCシンガポールオープン 最終日(21日)◇セントーサゴルフクラブ (シンガポール)◇7398yd(パー71)
セルヒオ・ガルシア(スペイン)の圧倒的勝利で終幕した「SMBCシンガポールオープン」。注目はやはり予選ラウンドを首位タイで折り返した石川遼選手でしょう。
結果だけを見ると、決勝ラウンドで失速して16位に落ちてしまったという見方をされてしまうのですが、この結果は決して後ろ向きなものではないと感じます。
理由は2つの“前進”が見えたからです。1つは、自信回復への一歩という意味での“前進”です。昨季はPGAツアーの出場権を失い、国内に戻ってから自己ワーストの5試合連続予選落ちを喫しました。フィールドを変えることを余儀なくされたという意味では、「落ちるところまで落ちた」と見る人も少なくないと思います。
そんな石川選手が、昨季の自身の最終戦「カシオワールドオープン」で2位タイ、今試合でも最多バーディ数を奪っての16位タイ。調子が上向いているかどうかは結果だけでは決して測れない部分はありますが、好成績が2度続いたことは確かな事実です。
実は石川選手のフェアウェイキープ率は、予選の2日間80位台、決勝も2日間(決勝進出68選手中)64位と最下位に近いところで戦っていました。確かに舞台となったセントーサゴルフクラブは、湾岸沿いというシビアなセッティングではありましたが、以前から課題に挙げていたティショットが完全回復していない状態で、この結果を出せたということは自信につながったと思うのです。
そしてもう1つは、この時点で課題が明確となったという“前進”です。昨秋から続けるスイング修正で定着してきた動きが「4日間“持たない”ことが分かったのが収穫」とコメントしていますが、良い部分と悪い部分がこの時点で把握できたということが大きな一歩だと思うのです。
石川選手は次のミャンマー、その次のマレーシア(欧州ツアー「メイバンク選手権」)の試合後、2~3カ月間のオフに入ります。長い期間のオフシーズンをどう過ごすかは一年を戦う上で重要。そこで大事になってくるのが、オフに入るまでの直近数試合の結果です。
石川選手だけでなく全選手に共通して言えることですが、課題というのは、練習中でもコーチに指導を受けている途中でもなく、試合でしか見つけることができないものです。「まったくダメ。何が悪いのか分からない」で終わるのか、今回の石川選手のように課題という「収穫」を得て終わるのか。その後の長いオフシーズンの過ごし方が、大きく変わってくると思われます。
「復調の兆し」「希望の光が見えた」という単純な表現がいまの石川選手に当てはまるかどうかは分かりませんが、彼の現状は決して立ち止まっているものではなく、突き進んでいることは確かです。我々の期待や希望を力に変え、彼の快進撃が今シーズン見られることを期待します。(解説・佐藤信人)