国内女子ツアー

「成長を実感」メジャーが導いた進化 有村智恵インタビュー vol.3/2010年 海外ツアーを振り返る

2011/01/05 12:32
海外4大メジャーに出場し、すべて予選突破。有村智恵にとって実りの多い経験となった

<恐怖心との戦い>
有村智恵が初めて海外メジャーの舞台を踏んだのが、09年の「全英リコー女子オープン」。なにごとも初挑戦というものは脳裏に深く刻まれるものだが、有村に刻まれたものは“海外メジャーへの恐怖”だったという。

予選2日間で通算19オーバー、カットラインに遠く及ばずに予選落ち。「あれだけ叩いてしまい、すごくネガティブな、苦手意識ができてしまった。海外の試合への恐怖心もあった」。09年オフに徹底して取り組んだ、ショットの球筋やアプローチのバリエーションを増やす練習。これらは全て、すでに出場資格を持つ2010年の海外4大メジャーを見据えてのものだった。

「クラフトナビスコチャンピオンシップ」で海外メジャー初の予選突破&9位フィニッシュ!

<海外メジャー初の予選突破!>
その初戦は、4月に開催された「クラフトナビスコチャンピオンシップ」。オフの練習やトレーニングの方向性は正しかったのか、否か。「今シーズンを左右すると思う」との決意で迎えた一戦で、有村は見事な成績を収める。24位タイで予選突破を果たすと、決勝ラウンドに入ってからも上位争いを続け、最終的に通算3アンダーの単独9位。「初めてメジャーで予選突破できて、4日間を戦えたことは大きな収穫。すごく楽しかった」。何よりも、メジャーに対するアレルギーを解消できたことが一番の成果となった。「私は飛距離が出るほうではないけど、それでも世界で戦えるという自信がついた」。有村にとって、極めて得るものの多い4日間となった。

その一方、4日間を上位で戦えたことで、世界トップとの差を冷静な目で分析することもできた。「コースが狭いので、飛距離は捨ててとにかくフェアウェイに置ければいい、という感じだった」という有村に対し、「上位の選手たちはすごくアグレッシブに攻めていて、自分のプレーとの大きな違いを感じた」と、強い衝撃を受けた。周囲でプレーする選手たちは、考え方からすでに違っていた。「このコースで、こんな攻め方ができるんだ・・・」。客観的に見て、レベルの違いを痛感したという。その差は、スコアにもはっきりと現れていた。「私の順位は9位だったけど、トップの選手とは10打差も開いていた。この差は、とっても大きく感じた」。現在の自分と、世界との距離を把握すること。最高峰の海外メジャーでしか得られない、貴重な経験となった。

「全英リコー女子オープン」で予選突破を果たし、昨年のリベンジを果たした

<全英でリベンジを果たす!>
「そのあとの全米女子オープン、LPGAチャンピオンシップに向けても、良いきっかけになったと思う」。日本ツアーと並行して出場するタイトなスケジュールとなる中、6月の「LPGAチャンピオンシップ」で34位タイ、7月の「全米女子オープン」でも28位タイと、いずれも初出場ながら予選突破を果たす。オフに取り組んだ、海外メジャーに向けてのトレーニング。その方向性は、紛れもなく正しいものだと確信を深めていった。そして、リベンジの舞台となる「全英リコー女子オープン」。初日こそ90位タイと出遅れたものの、2日目に巻き返して24位タイに浮上。見事に予選突破を果たし、最終的に21位タイで4日間の戦いを終えた。「良い一週間を過ごせたし、予選通過を目標としてきた中で、3日目、4日目を戦えたことはすごくプラスになった」。世界との差を痛感した、失意の帰国から1年。「少しだけど、成長を実感できた」。味わった悔しさを向上心へと変え、自身も確信する、1つ上の高みへとステップアップを遂げた。

海外ツアーへの苦手意識も払拭。2011年も海外で活躍する姿に期待したいところだ

<続く海外ツアーへの挑戦>
2010年は4大メジャー全てで予選突破。メジャー初のトップ10入り、全英でのリベンジなど、明らかな進歩を見せてくれた有村だが、まだまだ理想とするプレーには至らない。「良い位置に行けたといっても、神懸り的なパットが入ったマグレもあった。もう一度トップ10に入らないと、本当の自信にはならないとは思っている」。2011年シーズンで出場が決まっているメジャー戦は、今のところは初戦の「クラフトナビスコチャンピオンシップ」のみ。あとは、世界ランキングの資格等で出場権の獲得を見据える。2011年も、日本と海外の両ツアーで躍進する有村の姿に期待したいところだ。