永峰咲希 葛藤を乗り越えて初のメジャー制覇
◇国内女子メジャー第1戦◇日本女子プロ選手権大会コニカミノルタ杯最終日(13日)◇JFE瀬戸内海ゴルフ倶楽部(岡山県)◇6640yd(パー72)
2年ぶりの優勝会見で、永峰咲希の口から「葛藤」という言葉が何度か漏れた。
1つ目はこの日のプレーに関すること。3打差を追って出た最終日は、11番までに5つ伸ばしてトップに立ったが、12番で3パットのボギーとして通算13アンダーに一歩後退。「まさか外すとは思っていなかったので、そこで意識しちゃいましたね」と、優勝の2文字がちらつき始めた。
初優勝を飾った2018年の川奈ではプレーオフの末に勝利をつかんだ。「あのときは目の前に敵が見えていた。今回はボードを見ると意識しそうだし、下に11アンダー、10アンダーがいる、なんともいえない心境の中で、この後どうしようという葛藤があった」と振り返る。「それでも、ショットは悪くないって思ってやり切れたのが前回と違うかな」
前半8番(180yd/パー3)は、ピンが左エッジから5ydに切られていた。グリーンを外すと、左には窪地とバンカーが待っている。右からの横風の中、「5Uで低い球を意識した」という一打は、ピン左2mのエッジギリギリのところに止まった。「あんなところに止まるのはラッキー。これで勝てないなら、2勝目はしばらくないな」。このバーディパットをねじ込みながら、無観客のコース内で何度も自分に言い聞かせていた。
終盤の16番も3パットのボギーとして、リードは1打に縮まった。「自滅の雰囲気が出てしまうので、その流れを断ち切らなくちゃと大変だった。2回の3パットはどちらもオーバーして返しを外したので、ショートよりはいいかなと。初優勝のときも3パットをしているので、それを思い出しながらプレーしていました」と懸命に前を向いた。
コロナ禍で今季開幕は6月末にずれ込んだ。長いオフの間にも永峰は葛藤を感じていた。「試合がないから気を緩めたい反面、練習する時間は山程ある。“ここでやっておかないと”と、奮い立たせる葛藤の中でオフを過ごした」。その葛藤に打ち克って、自信のついたショット精度、コツコツ続けたパット練習。その成果がメジャーの舞台で支えとなった。「今週は横風とかピンも難しい中で優勝できた。この2年間で、いろんな技や使えることが増えた中での優勝かなと思います」
歴史ある大会にメジャー優勝者として名前を刻み、永峰は背筋を伸ばした。「この大会で優勝するのがどれだけ大きいことか肝に銘じて、常に優勝争いして、常に上位で争える選手になりたいです」。10代でも、黄金世代でもないけれど、伸び盛りの25歳。これからの女子ゴルフ界を、自覚を持って引っ張っていく。(岡山県笠岡市/今岡涼太)