3年ぶり6勝目 武藤俊憲が見せた意地と笑顔
山梨県のヴィンテージゴルフ倶楽部で開催された国内男子ツアー「ISPSハンダグローバルカップ」最終日。「68」で回った武藤俊憲が通算14アンダーの首位で並んだアンジェロ・キュー(フィリピン)との2ホールにわたるプレーオフを制し、3年ぶりツアー通算6勝目を飾った。
グリーンからティグラウンドへと続く長いインターバル。スイッチをオンに入れ直した場所は丘陵コースならではの上りの急坂だった。15番でボギーをたたき、先にホールアウトしていたキューとは2打差。「上がり3ホールでバーディ、パー、バーディで」。武藤はカートに乗りながら、キャディとうなずき合い「気を引き締め直した」。
16番、手前から20m近い下りのフックラインを沈めてバーディ。17番(パー3)はティショットをグリーン左のラフに外しながら3mのパーパットをねじ込んだ。18番(パー5)、2打目で右ラフからフェアウェイにレイアップしてから3オン。4mを決めて「有言実行」のプレーオフ進出。「アンジェロはホールアウトしてから長い時間が経っている」という目論み通り、72ホールを終えて45分後に再びティグラウンドに立った相手は“延長戦”でパーを拾うのがやっと。武藤は2ホール目でバーディを奪い、振り切った。
2012年「関西オープン選手権競技」以来となるタイトル。「長かった。いろいろあった」と数字上では空白の3年間を振り返る。クラブ契約のメーカーも替わり、昨年には左足首じん帯断裂の故障で約3カ月戦列を離れた。
8月に7歳になる次女・亜耶ちゃんは、父の最後の優勝の記憶もおそらく曖昧なまま「お父さん、最近優勝していないね。5回勝ったから、6回目も勝てるよね」と、せかしてくるようになった。「子供のひとことは重い。成長しているなあと感じるのと同時に、こっちも成長しなくちゃいけないと思う」。
そして確かに自分も変われた。優勝争いの緊迫した場面でも、笑えるようになった。「真剣勝負の中でも楽しむことが大事。不安になると緊張の表情になる。昨年の終わり4試合(すべてトップ10入り)、惜しくも敗れたときの教訓です」
イアン・ポールター(イングランド)、チャール・シュワルツェル(南アフリカ)ら前週「全米オープン」を戦った名だたる海外勢が出場した今大会は、優勝者に今季の日本ツアーで最高となる24点の世界ランキングポイントが付与された。厚くなったフィールドで、トップ9までに日本人選手は武藤と4位の小池一平だけ。苦労が余計に報われた思いがする。
「やっぱりホームなんで。日本人もうまい選手がいることを見てほしかった。今週“だけ”はポールターよりもうまかったと自信を持てる。賞金ランキングも上位を外国人が独占している。その中に割り込んでいかないといけない。トップになろうと思ってやらないとしょうがない」。パパの意地、日本人としての意地。愛娘たちに、海外勢に、それを見せつけるシーンはこれが最後、でいいはずはない。(山梨県北杜市/桂川洋一)