塚田好宣のタイランド通信2015<その2>
タイ遠征の経費って?
2013年から国内男子ツアーの日程に組み込まれたタイランドオープン(昨年はタイの政情不安で中止)。シーズン中に海外への往復を挟むのはスケジューリングも大変だけれど、体のコンディショニングも大変です。
金銭的なことも気になるところ。よく「海外遠征の経費はどうしているのですか?」と聞かれますが、基本的には国内の試合と同じく、選手は100%経費を自己負担します(一部、スポンサーが経費を出してくれる選手もいるでしょう)。海外試合ということで、遠征費が通常の試合よりも掛かってしまうように思われるけれど、意外にそうではないのです。
だいたい今回の遠征費がどのくらい掛かるのかというと、飛行機のチケットはエコノミークラスで往復約15万円、1週間のホテル代が約8万円、空港からのタクシーやリムジンでの移動に約2万円、現地でハウスキャディを雇う場合は練習日から6日間として約3万円です。試合へのエントリーフィーは1万800円、もしくはUS120ドルで、ヤーデージブックは20ドル。
国内ではレンタカーを借りることがほとんどだけれど、海外ではオフィシャルホテルに泊まればシャトルバスが用意されているので、ホテルとコース間の移動にはお金が掛からない。食事も毎日、和食ばかり食べなければ、日本よりも安くあがる。
日本からキャディを連れていく場合には、1週間のギャラ10万円に、飛行機とホテル代が加算となりますが、連れていかないと1週間で掛かる主な経費は上述の合計約30万円。日本でもだいたい30万円が目安になるので、今回のタイ遠征でも国内の試合の経費と同じくらいと言えます。
ちなみに、国内試合では月曜日に移動して日曜日までの6日間滞在します。例えば東京から福岡へ遠征したとすると、まず飛行機の往復チケットが約7万円。もっと安いチケットもあるけれど、変更が効かないものが多いのであまり買わない。そして現地での足となるレンタカーが約5万円。ホテル6泊分駐車場込みで約8万円。試合へのエントリーフィ1万800円。
そして大事なキャディは、帯同の場合は(選手によって契約の形態それぞれが違う)1週間10万円、それに順位によってボーナスをプラスする。ハウスキャディを使った場合は約5万円。最後に備品としてヤーデージブック3000円。これが大雑把に試合で掛かる経費です。
なので、この金額で海外へ出て来られるなら、これからもアジア圏のツアーとの共催でどんどん試合をしてほしいと思う。日本の選手はヘタではないけれど、国内に専念するあまり経験値が少なすぎる。こういう試合を足がかりに外に出て、経験値を上げていってほしい。ゴルフだけにとどまらず、人間としても大きくなれるチャンスだと思うから。
ヤーデージブックの違い
プロは試合でヤーデージブックというものを使います。ヤーデージブックとは、コースガイドや地図みたいなもの。グリーンの大きさやフェアウェイの形状、詳細な距離が記してあります。
ヤーデージブックは、コースマネジメントを考えるのにはとても重要なもの。昔は手書きでつたない絵に簡単な数字だけが書き込まれていたものだったけど、最近はイラストレーター系のソフトで作っているので、綺麗で見やすいし、昔よりかなり細かなデータまで書き込まれるようになった。ここアジアでも、ヤーデージブックは選手用に販売されています。
ところで、日本とアジアのヤーデージブックには大きな違いがある。両ツアーともに、目印となるポイントがフェアウェイにいくつも記してあるのだけれど、日本は基本的にグリーンエッジから100、150、200ydと50yd刻みで、赤や黄色でポイントが記してある。
でも、アジアはコースの形状を見て、選手がボールを打ってくるであろうと思われるところにポイントが記してある。どちらがいい悪いではなくて、考え方の違いが面白い。
今回もっとも驚いたのは、ヤーデージブックにエイムポイント用のページが増えていたことだ。これはエイムポイントを使ってグリーンを読む人が傾斜角を書き込めるように、グリーンの形状だけが記されている。日本ではエイムポイントを使ってグリーンを読む選手が何人かいるなぁ、というくらいなのに、既にアジアではエイムポイントが浸透しているということなんだね。日本よりも進んでいるなぁ。
こういう風に新しいものを受け入れて貪欲に取り組む姿勢は、日本の選手も見習っていいと思う。ちなみに日本のヤーデージブックにも、色で分けて傾斜角が細かく記されているのだけれど、エイムポイントのようなグリーンを読むシステムを取り入れている選手はまだ多くはない。これからアジアとの交流が増えれば、日本にも新しいことを受け入れる選手が増えてくるのかな。(文:塚田好宣)