名前の由来は消去法!? 蝉川泰果が親子で目指す日本ツアーの“起爆剤”
◇国内男子◇日本オープンゴルフ選手権競技 最終日(23日)◇三甲GCジャパンコース(兵庫)◇7178yd(パー70)
まだ小学校に入学する前、蝉川泰果(東北福祉大4年)の“遊び場”は百貨店のゴルフ用品売り場だったという。
父・佳明さんが明かす。「小さい子って、(家族などの)買い物が長くなるのを嫌がるじゃないですか。“託児所”じゃないけど、お店に試打室があるから使わせてもらっていたんです」。買い物を終えて迎えに行くときは「寂しがって泣いていたりしないかな」と心配になったものだが、「お父さん、もうちょっと待って。まだ全部打ててないねん」と試打クラブを楽しそうに振る息子を待つのが恒例だった。
印象的な名前。ゴルフ好きの父がタイガー・ウッズから着想を得たことは間違いないが、たどり着くまでには、ちょっとした紆余曲折があった。「これから先の時代を考えて“英語読み”できるような名前をつけてあげたい」。ジョージ、ジョン、ポール、リンゴ…と伝説的ロックバンドのファーストネームから模索していったものの、なかなかしっくりこない。「響きが良く、漢字を当てはめることができたのが『タイガ』。だから“取捨選択”の結果なんです」
本人が優勝会見で口にした「4大メジャーを制覇することが僕の夢」という壮大な野望は、かつて小学校時代にテレビ番組で“天才ゴルフ少年”として取り上げられたときからの言葉でもあった。
偉業を目指す道のりで成し遂げたいことがある。「30歳まではJGTOの試合を主戦場にして、賞金王を獲り続けられるようなプレーヤーになっていきたい。スポットで海外ツアーに行って、いきなり勝っちゃうような選手になれれば、おこがましいけど、僕が日本ツアーの起爆剤になれるかもしれない」。松山英樹のように早々に海外ツアーへ羽ばたくことの大切さも分かった上での覚悟を決めたキャリアプランだ。
「あいつは国内ツアーを盛り上げたいんですよ」。息子の思いを感じ取っている佳明さんは、常々発破をかけていたそうだ。「盛り上げるための一番ええ方法、教えたるわ。日本のツアーにタイガー・ウッズが現れたらええねん。お前が“日本のタイガー・ウッズ”にならんかい」――
グリーンサイドで聞いた日本オープンの優勝インタビューは父にとっても至福の時間だったが、「タイガー・ウッズのような選手になれるように頑張っていきたい」とのフレーズに笑いながら“注文”をつける。「『僕が日本のタイガー・ウッズになります!』って言うたら、キレイに締まるはずなのにね」。親子の合言葉は、プロとしての優勝スピーチに取っておく。(兵庫県三木市/亀山泰宏)