メキシコ初参戦のタイガー・ウッズ 国境を超えて運んだ熱狂
◇世界選手権シリーズ◇WGCメキシコ選手権◇チャプルテペクGC (メキシコ)◇7345yd(パー71)
メキシコに舞台を移してから3年目を迎えた世界ゴルフ選手権のシーズン第2戦。当地での最大の話題は、タイガー・ウッズがメキシコで初参戦することだった。大会関係者は「ウッズの出場で大会は盛り上がった」と評価し、観客動員にも大きな変化が生まれた。
AP通信によると、ウッズの出場が発表になったあと、前売りチケットの販売数が約10倍に跳ね上がったという。一昨年はダスティン・ジョンソン、昨年はフィル・ミケルソンとビッグネームが優勝し、観客の入りも良好だった。それでも大会は今年、ウッズの出場に備えて運営スタッフを増やし、警備体制を整えた。AP通信は、「ウッズがメキシコを動かしていると言っても過言ではない」という大会主催者の証言を伝えている。
メキシコはプロレスや、サッカー、闘牛、ボクシングなどが人気の国だ。女子ゴルフには元世界ランキング1位のロレーナ・オチョアがいたが、2010年の引退後は同国の選手名が上位から消えて久しい。男子も同200位までにいるのはアブラム・アンセル(同60位)のただひとり。「正確な人数ではないが、メキシコのゴルフは決して盛んではない。今週初めてゴルフに触れる子供もいる」(同関係者)。それでも、やはりウッズの人気は国境を超える。連日たくさんの観衆がウッズの後に続き、声援を送り続けた。
米国でスポーツ全般を取材する記者は、スポーツ界でのウッズの影響力はいまも絶大だと語る。近年は腰やひざの故障、不倫問題の発覚によりツアーを離れる時期もあったが、「個人単位で見るとウッズ以上の注目度がある選手はほぼいない。以前はマイケル・ジョーダンがいたが」という。
別の記者は「大リーグの一流選手を取材しているときのことだ。普段は記者の質問に丁寧に答える選手が、『きょうはもう勘弁してくれ』と取材を切り上げた。驚いて、後で球団広報に聞いたら『いまはウッズの優勝争いのさなかだから、勘弁してやってくれ』と答えたんだ」とのエピソードを明かしてくれた。
米国開催のビッグトーナメントと比較すれば、観客数は確かに劣る。それでもウッズは大会後、「観客たち、そして、子供が多いことは特に素晴らしいことだった」と振り返った。初日から2日間、ウッズと同組だったアンセルは「(ウッズの参戦は)僕らの国にとって、素晴らしいことだ」と語った。ゴルフが深くまで浸透していないメキシコでのWGC。大会関係者は、「ゴルフのルールを詳しく知らなくても、みんなタイガー・ウッズは知っているのさ」と述べた。(メキシコ・メキシコシティ/林洋平)