兵役間近のベ・サンムンがスーパームーンに祈る願い
全4戦が行われる米国男子ツアーのプレーオフシリーズ。125人、100人、70人、30人と出場人数が徐々に少なくなっていく、まさにサバイバルレースだが、ベ・サンムン(韓国)にとって“次戦に進めない”ということの意味は特別だ。彼はこのプレーオフシリーズで敗退次第、韓国に戻り、その後2年間の兵役に付くことが決まっている。
現時点でベのフェデックスカップランキングは34位。今週のシリーズ初戦「ザ・バークレイズ」は最終日を前に首位タイにつけたが、もしこの試合で勝てなかったとしても、3戦目までの出場はほぼ間違いない。だが、もう1つ気に掛かっていることは、10月に母国・韓国で開催される世界選抜と米国選抜の対抗戦「ザ・プレジデンツカップ」出場だ。
この試合での世界選抜出場メンバーは、次週「ドイツバンク選手権」終了時の世界ランクで米国と欧州の選手を除く上位10人と、その翌日に発表されるキャプテン推薦2人。前週終了時点で世界ランク114位のベは、世界選抜選考だと25番手にいる。もし今週勝てば、世界ランク40位前後に上がることが予想されており、うまくいけば、現在10番手のダニー・リー(ニュージーランド/世界ランク54位)、同11番手のアン・ビョンフン(韓国/世界ランク55位)らを抜いて上位10人に入れそうだ。
場合によっては、調子を上げている地元出身の選手として、世界選抜チームのキャプテン、ニック・プライスの目に止まり、キャプテン推薦をもらえるかもしれない。
テレビのインタビューに答えながらも、ベはアピールを怠らない。「ミスター・プライスが僕を選んでくれるかは分からない。フェデックスカップが終わったら、僕は韓国へ戻るんだ。彼がこのテレビを見ていることを祈るよ」。
ちなみに、もしプライスがベを選んだとしたら、本当にベは「ザ・プレジデンツカップ」でプレー出来るのだろうか?兵役参加は、そのあとで良いのだろうか?
「それは大丈夫。韓国でやる大会だから。飛行機に乗って、どこか別の国に行ったりしないから(逃げたりしないから)」とは、ベの日本語でのコメントだ。改めて、アメリカ人記者に英語で質問されたときは、「I hope so.(プレー出来ることを祈るよ)」と断言は避けていた。
この試合で優勝することも、プレジデンツカップのメンバーに選ばれることも、そして母国で世界選抜としてプレーすることも、実際はそれぞれ大きくない可能性なのかもしれない。だけど、すべてが綺麗に叶わないとも限らない。
当地はこの日、満月が大きく見えるスーパームーン(Super Moon)だった。夜空に大きく輝いた月は、ベ・サンムン(Bae Sang Moon)にとっての吉兆となるだろうか。(ニュージャージー州エジソン/今岡涼太)
■ 今岡涼太(いまおかりょうた) プロフィール
1973年生まれ、射手座、O型。スポーツポータルサイトを運営していたIT会社勤務時代の05年からゴルフ取材を開始。06年6月にGDOへ転職。以来、国内男女、海外ツアーなどを広く取材。アマチュア視点を忘れないよう自身のプレーはほどほどに。目標は最年長エイジシュート。。ツイッター: @rimaoka