2012年 マスターズ

ゴルフの祭典はビッグ3の球音で開幕

2012/04/06 12:54
ビッグ3が揃って名誉スターターを務めるのは76度目のマスターズで初めてのこと。大勢のパトロンが歴史的瞬間を見守った(Andrew Redington/Getty Images)

朝焼けに照らされたティグラウンド。2012年の「マスターズ」は5日午前7時40分に幕を開けた。真っ白なクラブハウスから人垣の間を割って、ゆっくりと歩を進めた3人。アーノルド・パーマーを先頭に、ゲーリー・プレーヤー、ジャック・二クラスが続いた。

2009年にプレーヤーが52度目の同大会出場を最後に“引退”してから3年、近代ゴルフ界を牽引したビッグ3が、名誉スターターを揃って務めるのは76度目のマスターズで初めてのことだった。それぞれがオーガスタナショナルGCで上げた勝利数はパーマーが4勝、プレーヤー3勝、そして二クラスが史上最多の6勝。3選手の合計出場数はなんと147回にも上る。

今年で76回の開催を迎えた伝統のトーナメントに、新たな歴史を刻んだこの瞬間。しかし2週間前までは心配される出来事もあった。パーマーが、自らがホストを務める「アーノルド・パーマーインビテーショナル」の最終日に高血圧のため急遽、検査入院した。しかし大事には至らず、タイガー・ウッズの約2年半ぶりの勝利を目の前で祝えなかったことを残念がったが「今はもう体調はいつもと同じ。2日後には家にいて元気だったよ」と微笑む姿に、多くの人々が胸をなでおろしたものだ。

このセレモニーには試合前のフィル・ミケルソンもグリーンジャケットを着て参列。3選手に往年の力強さは無かったかもしれないが、ドライバーで放った3球はすべてにフェアウェイをとらえ拍手喝采を浴びた。

直後に行われた公式会見では、次世代のビッグ3についても言及。ウッズを頂点としてそれに続く選手は誰なのか?ミケルソン、キーガン・ブラッドリーといった名前も挙がったが、プレーヤーはロリー・マキロイを強く推した。だが同氏は冒頭でこうも言った。「アーノルドとジャックとは長い間、世界中を旅した仲だ。我々はともに泣き、ともに笑い、素晴らしい時間を過ごしてきた」。数十年におよぶ激しいぶつかり合いが歴史を作ってきた。

オーガスタナショナルGCにはその1日4万人と言われる集客力に比べ、ギャラリースタンドの数が極めて少ない。それはコース全体を見渡せる1番ホールのティグラウンドからしてそうだ。それゆえに、早朝から鈴なりの行列ができたにもかかわらず、すべての人がその瞬間を目することはできなかったはずだ。だが、それにもかかわらず、偉大な3選手が響かせた乾いた球音は、誰の耳にもはっきりと届いた。そこにいたすべての人が作り出した静寂の時間が、偉大な彼らへの敬意に思えた。(ジョージア州オーガスタ/桂川洋一)

■ 桂川洋一(かつらがわよういち) プロフィール

1980年生まれ。生まれは岐阜。育ちは兵庫、東京、千葉。2011年にスポーツ新聞社を経てGDO入社。ふくらはぎが太いのは自慢でもなんでもないコンプレックス。出張の毎日ながら旅行用の歯磨き粉を最後まで使った試しがない。ツイッター: @yktrgw

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