マスターズ、エルスは招待されるべき?
ゴルフの祭典「マスターズ」まで、残り2週間を切った。フロリダ州のベイヒルクラブ&ロッジで行われている米国男子ツアー「アーノルド・パーマーインビテーショナル」では、もちろん王様パーマーのホスト大会でのタイトルを争う戦い、そして2日間を終えて首位タイに立ったタイガー・ウッズに視線が集中しているが、海外メジャー初戦への滑り込み出場をかけた戦いにも注目がそがれることは無い。
再三お伝えしているように、今大会終了後に発表となる世界ランク50位以内の選手がマスターズ出場権を獲得する。正確に言うと、次週の「シェル・ヒューストンオープン」の優勝者が出場選手の“最後のイス”に座ることとなるが、そんな奇跡の1人となる選手を除けば、今週の戦いが最後のチャンスと見られている。
現在の50位は石川遼。既に特別推薦による4年連続の出場を決めているが、実力を証明するため、フロリダでそのポジションの確保に全力を注いでいる。その一方で、プレスルーム内にもあるゴルフチャンネルに目をやると、モロッコで開催中の欧州ツアー「ハッサンII ゴルフトロフィー」を放送していた。眺めていると、ロバート・ロック(イングランド)とマッテオ・マナッセロ(イタリア)の2選手がたびたびカメラに“抜かれている”。それもそのはず、ロックは現在ランキング57位、マナッセロは61位と、まだマスターズ出場権を手にしていない最後のチャンスにかけた選手たちだからだ。
そして、こちらベイヒルでは現在ランキング62位のアーニー・エルス(南アフリカ)だ。前週の「トランジションズ選手権」で終盤に単独首位から陥落し、そのチャンスを逸した。19年連続での夢舞台がかかっているが、それも風前の灯といえる状況に近い。
かねてからエルスにはこれまでの活躍を称え、特別推薦が出る可能性が噂されていた。だが、ここへきて米国内外の世論では、「選手として晩年を迎えようとしているエルスを呼ぶべきなのか?」と疑問の声の方が大きくなっているようだ。
今大会で、エルスと予選ラウンド2日間をまわったタイガー・ウッズはこう話している。「エルスがいないマスターズは、これまでと違う感じがするだろうか?」という質問に「僕らの世代の選手にとってはみなそうだろう。グレッグ(・ノーマン)が出場しなくなったときもそうだった」とした。そして「彼らは何度もこれまで勝つチャンスがあったんだから」と加えた。
マスターズでは過去の全優勝者に「パスト・チャンピオン」として毎年出場権を付与している。だがノーマンは過去2位が3度、エルスは2度あったが、彼らはただ勝てなかった。「でも、そういうものなんだ」と最後に添えた王者の言葉に、勝負の世界の厳しさを感じた。(フロリダ州オーランド/桂川洋一)
■ 桂川洋一(かつらがわよういち) プロフィール
1980年生まれ。生まれは岐阜。育ちは兵庫、東京、千葉。2011年にスポーツ新聞社を経てGDO入社。ふくらはぎが太いのは自慢でもなんでもないコンプレックス。出張の毎日ながら旅行用の歯磨き粉を最後まで使った試しがない。ツイッター: @yktrgw