2012年 トランジションズ選手権

ベ・サンムン、プレーオフで世界NO1に敗れる

2012/03/19 10:50
プレーオフで敗れたべ・サンムン。だが”その時”は確実に近づいていると周囲に印象付けた。

あと一歩が届かなかった。フロリダ州のイニスブルックリゾートで行われた「トランジションズ選手権」最終日。昨年度の日本ツアー賞金王ベ・サンムン(韓国)は通算13アンダーのトップタイでホールアウトしたが、4人によるプレーオフの末、ルーク・ドナルド(イングランド)に敗れてツアー初優勝を逃した。

グリーン右奥から、願いを込めた一打はわずかにカップの横をすり抜けていった。プレーオフ1ホール目。フックラインに乗せたサンムンのバーディパットが外れた。ロバート・ガリガスもバーディチャンスを逃した後、最後に千両役者のプレーを見せたのは世界王者のドナルドだった。

トップに1打差の3位タイで迎えた最終日も、ビッグネームたちと対等に渡り合った。5番までに3つのバーディを決めてトーナメントリーダーに。難度の高い後半インは11番からすべてパーを並べて耐えた。しかし初勝利は、またもお預け。「最後の1ホールが残念。でもこの試合は初めてだったけれど、日本のコースにも良く似ていた。すべての面でいいプレーが出来たと思う」。ラウンド後、サンムンは笑顔を交えながらも、必死に声を絞り出した。

今季はこれでシーズン前半戦ながら、3度優勝争いの一部に加わったと言っていい。「ソニーオープンinハワイ」で8位、「ファーマーズ・インシュランスオープン」では4位で最終ラウンドに入り、それぞれ29位、33位に終わっていた。そして今週、2位タイはもちろん自己最高位。またも最終日に涙を呑んだ。だがサンムンは「日本でも同じでしたから」と話す。飛躍を遂げた昨シーズン、国内ツアーで初勝利を挙げたのは8月末。それまでに3度トップ10で、うち2度が首位タイで3日目を終えたが、最終日のプレーに苦しんでいたからだ。

またその経験則からの分析に加え、日本でプレーしていた時代からサンムンのキャディバッグを担ぐ山根彰キャディの言葉からは、彼の高い適応能力がうかがえる。「やっぱりこっち(米国)のほうが、それぞれのコースの違いが日本よりも大きいですね。確かに日本でも芥屋(GC、VanaH杯KBCオーガスタの会場)の高麗グリーンだったり、北海道の洋芝はといったこともありますが、本州の中ではそんなに変わりませんよね。でもアメリカは場所によってあまりにも違う。選手によっても合う、合わないが、よりあるんだと思います」。どんなコースにも対応できる柔軟性。それゆえ、今後のプレーに目が離せなくなる。

ただやはり目をひくのが、ゴルフを始めた頃からの夢だった米ツアーの舞台にも怖気づくことなく、堂々とプレーを続ける姿だ。スター選手に声をかけられ、照れくさそうにするのはホールアウト後だけ。「みんな強いけど、僕も自信はあります」と少なくとも気持ちの上では、最初から同じ土俵に立っていた。日本と米国での優勝争いの緊張感の違いについて何度聞いても、本人は「それは一緒です」と繰り返す。「日本でできたんだから、こっちでもできるはずです」。サンムンは誰よりも、日本ツアーで培った経験に誇りを持っている。(フロリダ州タンパ/桂川洋一)

■ 桂川洋一(かつらがわよういち) プロフィール

1980年生まれ。生まれは岐阜。育ちは兵庫、東京、千葉。2011年にスポーツ新聞社を経てGDO入社。ふくらはぎが太いのは自慢でもなんでもないコンプレックス。出張の毎日ながら旅行用の歯磨き粉を最後まで使った試しがない。ツイッター: @yktrgw

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