首位タイのR.グーセン「ラストチャンスだ」
フロリダ州のイニスブルックリゾートで行われている米国男子ツアー「トランジションズ選手権」3日目。2003年、そして2009年大会のチャンピオンである南アフリカのレティーフ・グーセンが、通算11アンダーとして、これまた2010年の王者であるジム・フューリックと並び、首位タイに浮上した。
グーセンは、熱い思いを抱えながら、静かに、リーダーズボードを上っていった。5アンダーの13位タイからスタートし、1バーディ、1ボギーで迎えた前半6番から2連続バーディを奪うと、9番で6メートルのバーディパットを決めて折り返す。さらに後半は14番から3連続バーディを決め、この日のベストスコア「65」をマーク。大会3度目の優勝に王手をかけた。
キャリアで過去2度の全米オープン制覇を成し遂げるなど、世界をまたにかけ数々のタイトルを手にしてきたグーセンだが、3週間後に迫った「マスターズ」出場が危うい状況にある。現在の世界ランクは52位。13年連続(14回目)の出場を果たすためには、次週の「アーノルド・パーマーインビテーショナル」終了後のランキングで50位以内を確保するか、その翌週の「シェル・ヒューストンオープン」で優勝するしかない。
しかしグーセンは、今週が夢舞台への最後の望みをかけた試合と決めている。原因は悩みのタネである腰痛だ。昨シーズンの後半から回復の兆しがなかなか見られず、ここ3週間は悪化の一途を辿っているという。そこで、出場権を持つ次週の試合を欠場し、数週間休養をとることを決断した。ただし、今大会の機会を活かして、オーガスタ行きのチケットを手にした場合は話が別。「復帰はマスターズの後になるだろう。でも、明日いいプレーができたらマスターズになるだろうね」。
故障を抱えながらトーナメントを戦う上で、最も苦痛なのは、満足に練習ができないことだという。試合前に納得いく準備ができず、胸には歯がゆい思いが充満する。しかしそれでも、「いつも言っていることだけれど、オーガスタとセントアンドリュースは世界中で大好きなコースの2つなんだ。みんなが出たい試合だろう」。43歳となっても、マスターズへの思いは格別だ。
「僕にとって、今日、そして明日がラストチャンスだ」。
グーセンはこの日、同郷のアーニー・エルスとムービングデーのラウンドをともにし、互いにスコアを伸ばした。19年連続のマスターズ出場をかけた戦いを続けているエルスも、最終日を前に通算8アンダーの7位タイと好位置につけた。周囲の期待と自らの使命を背負いながらも、穏やかな笑顔を見せて2人はコースを歩いていた。南アの英雄のツーサムが、この日、最も多くのギャラリーを引き連れた組に見えた。(フロリダ州タンパ/桂川洋一)
■ 桂川洋一(かつらがわよういち) プロフィール
1980年生まれ。生まれは岐阜。育ちは兵庫、東京、千葉。2011年にスポーツ新聞社を経てGDO入社。ふくらはぎが太いのは自慢でもなんでもないコンプレックス。出張の毎日ながら旅行用の歯磨き粉を最後まで使った試しがない。ツイッター: @yktrgw