2013年 ザ・エビアン選手権

グリーン上でウエッジ?16歳アマの放つ輝き

2013/09/14 10:42
16番グリーンでウェッジを使い、マウンドを回避したL.コーは6位につけた

雨の影響で1日遅れの開幕となったメジャー最終戦「ザ・エビアン選手権」。次々と年少優勝記録を塗り替えている16歳のアマチュア、リディア・コー(ニュージーランド)が第1ラウンドで、あっと驚く1打を披露し、会場を沸かせた。

距離は150ヤード前後と長くないが、横長でアンジュレーションの強いグリーンが待つ、難度の高い16番パー3。コーはピン左10メートルほどにティショットを乗せたが、そこからはカップの手前に大きなマウンドがうねっていた。つまり、“トーナメントレベル”でいう「乗せてはいけないところ」に乗せてしまったのだ。

「あれは、今日のハイライトでした」とコー。ラインを入念に読んだあと、手にしたのはパターでなくウエッジだった。フワリとマウンドを越えて傾斜の先にキャリーさせると、ボールはピンを2メートルオーバーして止まり、これを沈めてしぶとくパーセーブ。ギャラリーの歓声が2倍増しだったのは、言うまでもない。

無論ルール違反ではない(一般営業のゴルフ場ではローカルルールで禁止されていることが多い)。ただ、ウエッジという選択が正しくても、見た目のインパクトは強かっただけに、失敗すれば「アマチュアゆえ…」や「若さゆえ…」など“無謀なプレー”と捉えられていたかもしれない。豊かな発想力と、それを体現できる高度な技術があってこそ成立する1打だった。

韓国系のコーが放つ輝きに、韓国の伝説的ベテラン・朴セリも「彼女からは大きな感銘を受けている」と話す。朴は当時としては若い20歳で1998年にプロデビュー。いきなり「全米女子オープン」「全米女子プロ」のメジャー2勝を果たし、現在へとつながる韓国女子ゴルフの礎を築いた。現在海外メジャー5勝を誇る35歳のベテランは、昨年12月開催の韓国ツアーでコーと同組プレーし、「私の中に強烈な印象を残してくれた」と、かつての自分とも相通じる何かを感じたようだ。

なかなか可視化できない「何か」。選手寿命の長いゴルフでは、多くの場合、経験値とテクニックは年数を増すごとに高まり、その融合が「さすがプロの1打」を生む。ただ、ほとんどないことだろうが、逆に「プロだから打てない1打」もあるのかも?と、この日のコーのプレーを見て思った。

若さをためらいなく表現できる高度なテクニック。この10代は、やっぱり特別な存在なのだなあ・・・と改めて実感し、しっかり記憶に刻んだ。(フランス・エビアン/塚田達也)

■ 塚田達也(つかだたつや) プロフィール

1977年生まれ。工事現場の監督から紆余曲折を経て現在に至る。35歳を過ぎてダイエットが欠かせなくなった変化を自覚しつつ、出張が重なると誘惑に負ける日々を繰り返している小さいおっさんです。

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