群雄割拠の米国女子ツアー
シンガポールのタナ・メラCCで行われた米国女子ツアー第2戦「HSBC女子チャンピオンズ」はメジャー7勝の名手、カリー・ウェブの逆転優勝で幕を閉じ、有村智恵は同ツアー初優勝を1打差で逃した。
大会前に最大級の注目を集めていたのが世界ランキング1位のヤニ・ツェン(台湾)。ヤニには欧州女子ツアー2試合、そして前週の「ホンダLPGAクラシック」を含め4週連続優勝がかかっていた。最終日は前半だけで5バーディと猛追を見せたものの、結局単独3位に。それでも、最近の好調さをしっかりと見せつける結果となり「今日は楽しかった。フロント9は、すごいプレーができたと思う」と笑顔を見せた。
2月中旬に申智愛に代わって世界ランクトップに立ったヤニ。ポーラ・クリーマーは「世界ランクが入れ替わるのはエキサイティングだし、お互いを刺激しあうことがツアーに興味を持ってもらえる」と選手の間で競争が激しくなっていることを歓迎している。
この新しい時代は、2008年にアニカ・ソレンスタムが、そして昨年ロレーナ・オチョアが第一線を退いたことが大きな要因のひとつ。宮里藍は「特にロレーナは突然の引退で、そのポジション(世界ランク1位)がスパッと空いてしまった。みんなの目の色が変わるのが分かりましたね」と、“女王不在”がもたらした現在の様相を予感していたようだ。
では宮里も、その当時に目の色が変わった一人か?と、聞くと「私はそうでもなくて、たまたまそこ(1位に)にスポッと入ったら『私にもできるかな』と思うようになった」という。オチョアが引退したのが昨年5月初め。そして前半戦で非常に好調だった宮里は6月に初めて世界ランキング1位に上り詰めた。「目の色が変わる」ことに、少しの“タイムラグ”はあったようだが、今現在は再びその座を狙っている一人であることは言うまでもない。
約3年間、世界ランクのトップを維持してきたオチョアが引退する直前から、その1位の座は、申智愛→宮里藍→クリスティ・カー→宮里→申→カー→宮里→カー→申、そしてヤニと、1年もしない間にめまぐるしく政権が代わっている。「トップ5、トップ10選手の成績が安定してきた。“意識”なんだと思う」と宮里。各国のタレントが、世界を舞台に目の色を変えて争っている。長引く不況の影響から、スポンサー離れが深刻といわれる同ツアーだが、新しい“女王”と呼ばれる存在が決まるまでの道のりは面白い。
今大会の有村智恵の活躍は、そんな激しい争いの真っ最中にあった。(編集部・桂川洋一)
■ 桂川洋一(かつらがわよういち) プロフィール
1980年生まれ。生まれは岐阜。育ちは兵庫、東京、千葉。2011年にスポーツ新聞社を経てGDO入社。ふくらはぎが太いのは自慢でもなんでもないコンプレックス。出張の毎日ながら旅行用の歯磨き粉を最後まで使った試しがない。ツイッター: @yktrgw