大混戦の首位争い 1打差で散った敗者たちの表情
「サントリーレディスオープンゴルフトーナメント」最終日。勝負のサンデーバックナインは、ツアーでも希に見る大混戦の優勝争いが繰り広げられた。
追う者と、追われる者。両者の差は、ホールを追うごとにその境界線が失われていった。11番を終えた時点では、単独首位スタートの金田久美子が通算10アンダーまで伸ばし、後続に3打差のアドバンテージ。独走の予感さえ流れた空気が一変したのは、直後の12番パー5。1メートルのパーパットを外して3パットボギー、さらに13番と連続ボギーを叩き通算8アンダー、自ら混戦を招き入れてしまう。
そして、後続からの猛追。最終組の6組前を回る笠りつ子が、15番からの3連続バーディ。通算8アンダーでホールアウトし、クラブハウスリーダーとして後続を待つ展開に。さらに、2組前を回る森田理香子、1組前の不動裕理と比嘉真美子、最終組の吉田弓美子と金田を交えた最大6人が、通算8アンダーで首位に並んだ。最終的に、17番、18番と連続バーディフィニッシュを遂げた森田が終盤に抜け出し、勝負強さを発揮しての逆転勝利。白熱のサンデーバックナインを制し、比嘉、吉田、金田の3人は1打差の2位タイに甘んじた。
ホールアウト後、1打差で惜敗を喫した3人の表情は、それぞれ明確に分かれた。比嘉は「4日間ともに良いプレーができて、今までとは違う感じ。今までは1日は大叩きすることが多かったけど、耐えられたし、スコアも伸ばせた。悔しさはありません」。「全英リコー」出場権も確定させた19歳の表情に陰りは見られなかった。また、今週は体調不良の中でのプレーが続いた吉田は「今週は、ひょっとしたら出られない感じだった。久しぶりの優勝争いで心臓はバクバクだったけど、私としては上出来でした」と、自身も予想していなかった展開。吉田の笑顔に、強がりの様子は窺えなかった。
そして、全身から悔しさを滲ませていたのが、首位の座を守りきれなかった金田。クラブハウスに戻ってしばらくはロッカールームから出られず、涙声をふり絞るように報道陣の問いかけに応えた。「ミスを無いようにしてバーディを獲りにいったけど、(12番、13番の)ボギー、ボギーで・・・。悔しいです」。
納得、笑顔、涙。三者三様の表情と感情が入り交じった敗者たちの姿は、プレーヤー自身も勝利の確信を持てないまま決着を迎えた大混戦を象徴しているようだった。(兵庫県神戸市/塚田達也)
■ 塚田達也(つかだたつや) プロフィール
1977年生まれ。工事現場の監督から紆余曲折を経て現在に至る。35歳を過ぎてダイエットが欠かせなくなった変化を自覚しつつ、出張が重なると誘惑に負ける日々を繰り返している小さいおっさんです。