姉も握る、酒井美紀の初優勝への鍵
今年の国内女子ツアーは、7試合を消化して一ノ瀬優希、堀奈津佳、比嘉真美子のツアー初優勝者3人が誕生。そして今、4人目の初優勝にもっとも近い存在といえるのが、ここ2試合連続で3位に入り、今週の「フジサンケイレディスクラシック」に乗り込んだプロ4年目の酒井美紀。この初日も首位に2打差の9位タイと好スタートを切り、追い風は未だ衰える気配が見られない。
現在の好調について、その要因を「自信」と挙げる酒井。「ショットはもともと自信があったけど、今はパットも自信を持って打てていることが大きい」。その現れは、難度の高い最終18番でのバーディフィニッシュだ。2打目は左からのアゲンストが吹く風の中、「今日の気持ち的にはいけると、ギリギリを狙った」とピンをデッドに狙い、「ちょっと難しかったけど、自信を持って打ったら入りました」と、4メートルのスライスラインをねじ込んだ。
自信とともに、「最近は守りに入っている自分があった」という積極性も蘇った。その一因には、「刺激になった」という2つ年下で仲の良い比嘉の存在もある。比嘉と練習ラウンドをともにした時に、目の当たりにした積極的なプレー。酒井は、キャディを務める姉の美香さんに、こうもらした。「自分もああいう風になりたい」。
同年代たちの活躍により、“初優勝”という響きも身近なものとなりつつある。「私もできるのかな、という気持ちはある。技術的には正直、劣っていないと思っています」。その成就のために、足りないも部分も自覚している。初優勝を惜しくも逃したこの2週間を振り返り、「楽しくなり過ぎて、強気になり過ぎてしまうところがある」と酒井。「先週も先々週も、攻めすぎての3パットがあった」。取り戻しつつある積極性が裏目に出ていることは悩ましい部分でもあるが、そこはキャディの美香さんの出番だ。「(強気が過ぎる時は)こう考えているなって、見ていて分かるんです。そういう時は、さりげなく会話をして止めることが多いですね」。
姉の優しき手綱があって、成り立つ酒井の攻撃的なプレー。失敗と惜敗を重ね、少しずつ頂点へと近づいている“2人の初優勝”は、あと一歩まで迫っている。(静岡県伊東市/塚田達也)
■ 塚田達也(つかだたつや) プロフィール
1977年生まれ。工事現場の監督から紆余曲折を経て現在に至る。35歳を過ぎてダイエットが欠かせなくなった変化を自覚しつつ、出張が重なると誘惑に負ける日々を繰り返している小さいおっさんです。