惜敗の吉田、悔し涙の誓い
3日目に引き続き、首位を走る有村智恵と2位で追う吉田弓美子のマッチレースに注目が集まった「日本女子プロ選手権 コニカミノルタ杯」最終日。吉田は、3日目こそメジャー最終組の雰囲気に呑まれて序盤にスコアを崩したが、最終日は1番、2番で連続バーディとスタートから流れを掴む。その後、有村に1打差に迫って迎えたサンデーバックナインはしかし、早々に勝負の分かれ目を迎えた。
10番(パー5)のティショットを左ラフに打ち込むと、2打目はフェアウェイに刻むだけ。3打目はグリーン左の深いラフに入り、寄せきれずにボギー。対する有村は7mのバーディパットをねじ込み、再び3打差に。「取り返したかった」という11番でもティショットがラフに捕まり、痛恨の連続ボギーで4打差のビハインド。この時点で、メジャー初優勝は夢と散った。
ホールアウト後、報道陣の輪に笑顔で飛び込み、「悔いはありませんっ!」と声を張る吉田。しかし、いつも通り明るく振る舞おうという虚勢は、その直後に早くも限界を迎える。目から大粒の涙がこぼれ落ち、「・・・本音を言うと、悔しいです」と弱々しく声を振り絞った。
「これを励みにして、もっと上で戦える選手になりたいです」。この言葉を聞いて頭によぎったのは、吉田がプロテストに合格した翌2010年の「大王製紙エリエールレディスオープン」最終日。賞金シード争いの当落線上にいた吉田は、僅か1ストローク及ばずの30万円差で初シード入りを逃した。その時に、涙を流しながら口にした「もっと、強くなりたいです」という言葉。その心の叫びは、今も耳に残っている。
それから2年。翌年に初シードを手にし、今年は「NEC軽井沢72ゴルフ」でツアー初勝利を達成。悔しさをバネに努力を重ね、メジャータイトルも手が届くところまでに成長を遂げた。吉田にとって、悔し涙は次なるステップアップへの誓い。「私も、有村智恵ちゃんの背中に追いつけるように頑張りたい」。吉田の次なる目標へ向けた戦いは、この日の涙から始まりを告げた。(滋賀県甲賀市/塚田達也)
■ 塚田達也(つかだたつや) プロフィール
1977年生まれ。工事現場の監督から紆余曲折を経て現在に至る。35歳を過ぎてダイエットが欠かせなくなった変化を自覚しつつ、出張が重なると誘惑に負ける日々を繰り返している小さいおっさんです。