36歳からの大人のゴルフ 新婚・矢野東
ツアーきってのイケメンプロが、ついに年貢を納めたのは2か月半前。3月1日、ツアー3勝の矢野東が一般女性と入籍した。かつて引き連れた多くの女性ファンの溜め息が立ち込めた春先。ただ本人は、そんな周囲の思いなどつゆ知らず、ゴルファーとしてその身に起こった変化を感じ取っている。
兵庫県の六甲カントリー倶楽部で開催されている今年の「関西オープンゴルフ選手権競技」。予選ラウンドを終え、矢野は通算6アンダーで首位に3打差の9位につけた。2日目は7メートルを沈めた7番からの5連続バーディを活かし「67」。パットの名手としての輝きを取り戻しつつあるようで、周囲も6シーズンぶりの勝利への期待も次第に膨らんでくる。
ただ、矢野はそんな誘いに乗って来なかった。「正直ね、そんな風に考える余裕ないんですよ。今年は何にも考えてない。考えてもやることは一つしかない。プライベートで結婚もして…一打も無駄にできなくなった。ゴルフやっていて、一打も無駄にできないのが原点。目の前の状況判断をして、自分ができるベストを尽くすだけ。それが本質というか」。30代後半に差し掛かり、立ち戻った原点。家庭を持った責任感がそうさせた。
6年前、2008年は矢野のベストシーズン。年間2勝を挙げ賞金ランキングで2位に食い込んだ。翌09年には海外メジャーに挑戦。ただ今振り返れば、あの頃は未熟だったと分かる。
「今とは全然違う。あの時は、ナメてるっていうか…余裕しゃくしゃくで何にも考えていなかった。調子が良くて…。でも、プレースタイルは今の方が絶対にいい。一生懸命、全ショットに集中しているから。(当時は)パターが入らなければ試合中にダラけて、怒りをあらわにして…今はそんなことは、言ってられなくなった」。あの頃のような結果はまだ出せていない。けれどゴルフに向き合う姿勢は真摯になったと言い切れる。
この春、髪を切った。デザインカットではあるけれど、サッパリ、おとなしくなった印象だ。「一回短くしたらラクで。落ち着いたし、チャラチャラする必要もねえなって。いつ?やっぱり結婚してからだね」。最近じゃ、ちょっぴり付き合いも悪い。料理が得意な裕美夫人。練習を終えると自然と足が自宅へ向く。良き先輩で飲み仲間の平塚哲二も「(酒の席に)あんまり来なくなったな…家にいるのが楽しいみたい」と、冷やかし気味に笑う。
「ひとりで好き勝手、生きてきたから」と、“やんちゃな過去”とは決別したようなセリフを吐いた矢野。その姿は、以前よりも精悍さをグッと増したように見えた。奥様、ごめんなさい。結婚して、プロの女性ファンが減っていくかどうかは、それはまた別の話のような気がするんだ。(兵庫県西宮市/桂川洋一)
■ 桂川洋一(かつらがわよういち) プロフィール
1980年生まれ。生まれは岐阜。育ちは兵庫、東京、千葉。2011年にスポーツ新聞社を経てGDO入社。ふくらはぎが太いのは自慢でもなんでもないコンプレックス。出張の毎日ながら旅行用の歯磨き粉を最後まで使った試しがない。ツイッター: @yktrgw