河井博大、ジャンボのゲキに「めっそうもございません」
名古屋ゴルフ倶楽部・和合コースで開催中の国内男子ツアーの今季第3戦「中日クラウンズ」2日目。河井博大が、この日のベストスコアタイ「65」をマークして3アンダーの3位タイに急浮上した。
初日を終えて2オーバー、37位タイ。スタート直後の出来では予選通過も気になってくる位置で第2ラウンドを迎えた河井は、その序盤からあれよ、あれよとリーダーズボードを駆け上がった。1番で4メートルのパットを沈めたのを起爆剤にいきなり3連続バーディを奪取。第2打をピンそば70センチにつけた6番からは2連続バーディ。石川遼が2年前にマークしたハーフ「29」には一歩及ばなかったが、前半アウトを「30」で折り返した。
小さな砲台グリーンが待ち受ける和合は、自覚こそ無いがショットメーカーの40歳にとっては“向いている”コースのひとつのはず。それでも「このコースは何が起こるか分からない。丁寧に、丁寧にやっていこうという思いだけだった。和合はうまくやらせてもらえない。グリーンを見たときのロケーションから圧迫感がある」と、ラウンド後も警戒心を保ったまま。後半は2バーディ、2ボギーとスコアを伸ばせなかったものの、一気に優勝争いに加わった。
シーズン3戦目を迎え「やっと自分のゴルフができてきたように思う。楽しみになってきた」という。
昨年5月の「日本プロゴルフ選手権大会 日清カップヌードル杯」、メジャーの舞台で悲願の初優勝を飾った。朴訥な苦労人のサクセスストーリーは同世代の共感も呼び、ゴルフ界の“中年の星”のひとりとなった。オフには書籍(『やめないでよかった―折れない自分を作る ための44のヒント―』)も出した。
ただ、一方でゴルファーとしての欲も出てきた。「もっと飛ばしたい」。大幅な飛距離アップを求めてトレーニングにも励み、ダイナミックなゴルフを志す。しかしスイングは崩壊していくばかりで、開幕直前の3月を迎えた。そんな時、師匠の田中秀道から「何を急に変えようとしているんだ。せっかく自分のスタイルを確立させてきたのに」と苦言を呈された。「ハチャメチャになっていたところだったけれど、それで目が覚めた」と長年付き合ってきた堅実なゴルフを貫くことを、決めた。
今オフも数年前からアドバイスを受けている尾崎将司のもとで合宿に参加。ジャンボからは「まだ認めていない。神様は人生のうち1回は見てくれる。次に勝ったら祝ってやる」と厳しいゲキ。「調子に乗っているんじゃないだろうな?」と“すごまれた”が「めっそうもございません」と100パーセント、真っ直ぐな気持ちで弁明した。
田中、そしてジャンボの2人はこの「中日クラウンズ」の歴代チャンピオン。だが「僕と2人を比べちゃいけません」と笑ってピシャリ。「その人、その人によってスタイルがあるので」。初優勝から1年。その言葉にも、ちょっとだけ自信が備わっている。(愛知県東郷町/桂川洋一)
■ 桂川洋一(かつらがわよういち) プロフィール
1980年生まれ。生まれは岐阜。育ちは兵庫、東京、千葉。2011年にスポーツ新聞社を経てGDO入社。ふくらはぎが太いのは自慢でもなんでもないコンプレックス。出張の毎日ながら旅行用の歯磨き粉を最後まで使った試しがない。ツイッター: @yktrgw