【藤田寛之専属キャディ・梅原敦の全米OPレポート2013<2>】
藤田さん、“完全復活”にはほど遠いけど、昨日までの最悪な状況と比べれば、まだ少しは体を動かせそうだということで、今日11日は今大会初の練習ラウンドに出る事が出来ました。
体調面やコースチェックの他に、今日はどうしてもラウンドしなければいけない理由もあったんです。それはジム・フューリック選手と一緒にラウンドする約束をしていたから。以前から藤田さんはフューリックとのラウンドを熱望していて、知り合いを通じて今まで何度かオファーを出してたんです。
だけどなかなか実現までには至らず、やっぱり厳しいのかな…なんて思っていたら、今回フューリックが「じゃあ、火曜日に一緒に回ろう!時間は何時でもいいよ、そっちが好きな時間を取ってくれれば♪」って言ってくれて。凄く良い人でしょ。
藤田さんはもちろん、僕も見てみたかったんです。あの人はなぜメジャーの舞台になると必ず上位にきて優勝争いをするのかを知りたかったから。実際に近くで見たフューリックは、まず大きかったな。あの独特なスイングも凄くシャープで美しかったですよ。
あんなに大きいのに、ドライバーのシャフトは藤田さんより1インチも短い44.5インチ。藤田さんがなぜ短いシャフトを使うのかを聞いたら「僕は極端にアップライトに上げてそこから振り下ろしてくるから長いシャフトだとタイミングが合わないんだ」って。それを聞いた藤田さんもね、自分もアップライトに上げて行く方だから試してみるって言って、残りのホールはドライバーを短く持って打っていましたよ。
その他にもフューリックは藤田さんと比べて、バンカーショットの時にあまりボールを切らずにフェースを真っ直ぐに出して行くんです。手で投げて運ぶように。それもすぐに取り入れ、入念に新たなバンカーショットを練習されていました。日本では他の選手から“バンカーの名手”とも呼ばれる藤田さんがですよ!やはり世界トップクラスの選手は、藤田さんが持ってない技術を持っているんですね。
僕が注目したのは、フューリックのコースをチェックするポイント。グリーンは傾斜はもちろんだけど、それよりも試合で切ってくるであろう仮想のピンポジションに対して自分がボールを運んでこなきゃいけない場所を入念に探してた。それとミドルホールのセカンドショットや、ロングホールのサードショットを打つ場所のライを細かく見ていましたね。難しいライから打つ技術よりも、どれだけ良い条件で打てるかなんでしょうか。最も、難しいライから打つ技術も、もの凄いんですけどね。
ラウンド後、藤田さんに聞いてみたんです。フューリックの一番凄いところは何ですかって。藤田さんは「凄いのはドライバーでもボールの回転をコントロール出来るところ。おそらく彼は僅か5ヤードぐらいの幅の中で、自分がイメージした通りのスピンをコントロールしたドライバーショットを打つ事ができるんじゃないかな」。確かに曲がらなかった。特別飛距離が出るわけでもないけど全く曲がらない。
この難コースが、フューリックだけを見ていたらとても簡単なコースに見えましたから。彼がなぜ難しいセッティングのコースになればなるほど上位に来るのかは、藤田さんが言ったこの言葉に集約されているでしょう。
「特別凄い球を打つわけでもない。特別凄い技術を持っているわけでもない。いつも変わらず普通に打って行くだけなんだけど、それが一番凄い」。フューリックは通常のトーナメントであろうがメジャーであろうが、例えプライベートゴルフであろうが、きっと何も変わらず毎回同じゴルフが出来るんでしょうね。
病み上がりでしんどかったでしょうけど、藤田さんにとっては最高の1日になったんではないでしょうか。