2011年 WGCブリヂストンインビテーショナル

遼、4位タイに終わるも米ツアーシード権獲得に向け前進

2011/08/08 09:10
海外ツアー初制覇を逃した石川遼だが、大きな収穫を手にして全米プロへ向かう

世界ゴルフ選手権シリーズの今季第3戦「WGCブリヂストンインビテーショナル」は7日(日)、米オハイオ州ファイヤーストーンCCで最終ラウンドを行い、首位に1打差の11アンダー、2位タイから最終組でスタートした石川遼は、5バーディ、4ボギーの「69」で回り通算12アンダーの4位タイにとどまり、海外ツアー初優勝はならなかった。

米国で初体験となる最終日最終組での優勝争い。だが石川は自分が想像していたよりもはるかに冷静に1番ティに立った。「とにかく『結構狭い練習場だ』と自分に言い聞かせた」。ドライバーを振り切り、フェアウェイをとらえると、大きな拍手に包まれながら芝の上を堂々と歩き始めた。

アダム・スコット(オーストラリア)を1打差で追いかける石川は早々にペースをつかむ。2番(パー5)で残り212ヤードの第2打を1.5メートルにつけるスーパーショットで2オンに成功すると、イーグルパットを外したもののバーディを先行。続く3番で右から3メートルを沈めて連続バーディとし、通算13アンダーでトップタイに並んだ。続く4番をボギーとし一歩後退するが、6番で6メートルを沈め、チャンスをなかなか生かせないスコットに再び追いついた。

しかし8番でティショットを右ラフに曲げ、3オン2パットのボギーとして再度1ストロークのビハインドとなり、そのまま後半に突入。すると12番(パー3)。スコットがティショットでグリーンを外し左のラフにこぼすと、石川の胸にわずかな隙が生まれた。「“練習場”と思えなくなってしまった。易しい方にこぼれたわけではない。ここでバーディを獲れば追いつくと打つ時に考えた」。石川のショットはグリーンをとらえてパーとしたものの、スコットはラフからチップインバーディ。「(スコットが)あそこで、より一層気合が入ったのが分かった」。

このラウンドで初めて2打差をつけられた相手のスイッチが突然入った。スコットは14番で下りの8メートルをリスクを恐れず強気に沈めてガッツポーズ。3打差とされた。15番でピン下から勝負に出た上りのバーディパットを1.5メートルオーバーさせ3パットボギーとしたのに対し、スコットはティショットを左に外し、2メートルのパットを沈めて貫録のパーセーブ。上がり3ホールを残して4打差は、ノーボギーラウンドを続けた王者をとらえるには、あまりに大きかった。

最終18番で初めて浴びた最終日最終組に対する割れんばかりの大声援。悔しさは確かにあるが「勝てる人と戦えたのは大きい」と満足感も少なからずある。手に汗握る展開で、背中にかかる重圧は「パターに一番影響が出やすい。アドレナリンが出たり、プレッシャーがかかる時、ドライバーは振り切ればいいが、パッティングは繊細。感覚が出せなかった」と微妙にタッチの変化も感じた。「『ここのホールが大事だな』という所で、ものにできるかどうかが必要」という最高峰の勝負強さを実感。「本当にいい経験ができた」と何物にも代えがたい収穫もあった。

そしてこの好成績は、“経験”だけでなく19歳の今後の道筋も明るく照らす。米ツアーではシーズンの賞金ランキングで125位以内に入れば翌年のシード権を獲得できる。今大会の4位で332,500ドルを手にした石川の今季の米ツアーでの獲得賞金は580,136ドル。昨年の125位相当の賞金額は786,977ドルと、そのラインに近づいた状態で、次週の「全米プロゴルフ選手権」に出場する。

概算で言えば、全米プロでそこに到達するためにはトップ10以上の成績が最低でも求められる見込み。「細かいことは分からないが、来週の結果次第でPGAのメンバーになれるのは分かっている。ぜひ全力でプレーしたい。このボーダーラインを目指してやってきた」。日本人史上4人目となる米ツアー制覇、そして史上最年少でのWGC制覇はならなかったが、新たな可能性を切り開く大きな一歩を踏んだ。(米オハイオ州アクロン/桂川洋一)

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