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2016年 全米オープン
期間:06/16〜06/19 場所:オークモントCC(ペンシルベニア州)

霧の向こうの巨人 オークモントは世界中のゴルフクラブのリーダー

オークモントがことを始めると、皆がそれに倣う

なぜ、この木々の伐採が重要な問題となるのか。それは、オークモントが米国におけるチャンピオンシップゴルフのスタンダードだからである。「全米オープン」以外にも、オークモントでは「全米アマチュア選手権」が5回、「全米プロゴルフ選手権」が3回、そして「全米女子オープン」が2回開催されている。オークモントで起こる多くのことがゴルフというゲームに影響を与えるのだ。

何と言っても、ここは高速グリーンが流行する何十年も前からそれを実践してきたのである。ここの速いグリーンが1930年代末にスティンプメーターが作られる原因となったことをご存知だろう。その善し悪しは別にして、スティンプメーターによるグリーンの速度計測は非常に多くのクラブでいまなお使用されている。全米ゴルフ協会(USGA)は、今大会へ向け、スティンプメーターで14フィートを計測するグリーンの仕上がりを要請。これは2007年大会と同じ速さである。

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世界共通ともいえるオークモントへの極めて高い敬意は論争さえ起こさせない。2007年、USGAはパー3の8番ホールにバックティを新設し、最終日には最大300ydまでホールを伸ばせるようにした(288ydに設定された練習ラウンドでホールインワンを決めたトレバー・イメルマンは、ボールの入るところが見えたかという問いに対し、『僕らはあんな先まで見えないよ』と答えている)。

他のクラブであれば、300ydのパー3など滑稽化するために膨らまされた話か、あるいは単なる冗談と取られるであろうが、それがオークモントで起こったため、世のゴルフ設計家は、それに続くようにして、極度に長いチャンピオンシップティを設けてチャンピオンプレーヤーたちにワンショットホールでメタルウッドを握らせようというアイデアを享受した。オークモントは過激な手段でテクノロジーと対抗する術を設計家たちに知らしめたのである。

オークモントでの木々伐採プログラムは、この色々な物語の詰まったクラブのゴルフというゲームに対する最高の貢献であるとも言える。これは、1950年代の米国内陸部のコースを中心に端を発した、継続的かつ誤った植樹によるコースの“美化”という流行に逆行する動きである。

当時22歳だったジャック・ニクラスが、プロとして臨んだ初めての大会で、プレーオフの末にアーノルド・パーマーを下してメジャー初制覇を遂げた1962年大会。プログラムにざっと目を通してみると、そこにはどのホールにも若木が植わっている空撮写真を見出すことができる。また、苗床に関する広告も7種類掲載されているのだ。これで、その後USGAが、まだ全米選手権を開催するには未完であると評されたミネソタ州のヘーゼルティンを1970年の「全米オープン」の開催地とした決定もうなずける。今年の9月30日から10月2日にかけて2016年「ライダーカップ」が開催されるヘーゼルティンも、今では多くのホールで広葉樹がそびえ立っている。

オークモントで1973年、1983年、そして1994年の「全米オープン」が開催された際、グリーンには多くの落ち葉があったが、その後、クラブは植樹を止め、大幅な木々の削減に着手した。初めは誰に知らされることもなく、木陰に隠れた芝生の成長を促進すべく始められたのである。当時の管理責任者だったマーク・クーンズは、18人で構成される管理委員会の承認のもと、いつも午前4時に作業員を集めた。彼らはトラックのヘッドライトを頼りにタープを組み、木を切り倒し、切り株を地面の高さまで削ると、木片や木の葉を吸引機で除去してそこを芝生で覆ったのである。作業は夜明けまでには終了したため、木が伐採されたホールをプレーするゴルファーたちは全くその事実に気が付かなかった。クーンズはこの方法で500本近くの木々を伐採したが、ある日、キャディがそれまでなかった大きな隙間に気付き、これを影響力のあるクラブメンバーに告げた。

これは瞬く間にメンバー間で論争の種となり、ミーティング、脅迫に近い請願、そして訴訟の幻影などを呼び込んだ。中にはクーンズに面と向かって「オークモントの屠殺者」と言う者まで現れた。しかし、管理委員会はこうした逆風に屈することなく、オークモントの木々は設立者であるフォーンズが当初掲げていたコンセプトに反するため、伐採されるべきであるという信念を貫いた。

彼らがその証拠として用いた物の中には、1938年にグラントランド・ライスが記事に書いた、オークモントはセントアンドリュースに引けを取らないリンクスと表現した一節。木々がわずかしかない1949年のオークモントの航空写真、そして1994年のゴルフダイジェストに掲載されたコースの軟弱化に関する記事などがあった。

結局、過半数のメンバーは賛成に回ったが、木々の伐採の継続を認めながらも、追加で予算を割り当てることについては拒否した。これにより、クーンズは通常の管理業務から予算を削る必要に迫られ、結果としてコースの他のエリアが若干の痛手を被ることとなったのだが…。

継続可能性のお手本

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