ラブも奇跡の攻勢、ノーマンまたも惜敗。最後に抜け出したオラサバルが5年ぶり2回目の復活優勝。
またも、またしてもグレッグ・ノーマンは勝てなかった。11番で10メートル近い長いパットを放り込んで6アンダー。因縁の12番ショートは池にこそ入らなかったものの難しいバンカー越えのアプーチを強いられてボギー。しかし13番、ピンデッドに2オンさせ、フックラインを読み切って劇的なイーグル。一気に7アンダーとして首位に立った。今年こそ、ノーマンの優勝かと誰もが確信した。
3番ホールからズルズルと3連続ホギー。崩れかかったオラサバルは、インに入ってから別人のように立ち直った。10番でバーディ。ここで混戦から抜け出して、ようやく進撃開始。12番はバンカーから絶妙のプレーでパーセーブ。ノーマンが初めてリードしかかった13番でもバーディを入れ返して首位を譲らず。16番でさらに一つ沈め、アイクトリーに当てた17番も素晴らしいリカバリーでパーセーブ。8アンダーでそのまま逃げきった。
ノーマンは終盤にさしかかってから崩れだした。14番15番と連続ボギー。17番で惜しいバーディパットを外して、ようやく笑みがこぼれた。苦い味の笑いだった。今年も、またもダメだったか・・・。そのあとのノーマンの表情は、すべてを許容する敗者、グッドルーザーの顔になっていた。いい顔だった。ノーマンはどんどんいい男になっていく。
圏外かと思われたデービス・ラブIIIも16番で奇跡的なチップインで場内を沸かせた。グリーンはるか左から、ピンの横というよりピンオーバーのアプローチ。そのボールが傾斜をとろとろ下ってカップに吸いこまれるという超ミラクルなチップイン。ラブというのも、決して簡単には負けない男だ。
最終パットを決めたオラサバルのアクションは小さかった。クイッと拳を握って、勝ったぞと自分に納得させるような動作だった。大きく笑って勝者を抱擁するノーマンと対照的に、ちょっと控えめなオラサバルの喜びの表情だった。5年ぶり2回目のマスターズ優勝。もうダメかとも思われた故障からの完全なカムバック。
いい試合だった。オラサバルの故郷バスクの敬虔なカトリックの村の窓辺では、昨夜また祈願のロウソクが灯されていたのだろうか。5年前の勝利の前夜には、そんな小さな灯火が終夜輝いていたと聞いたような気がするのだが。
丸山茂樹も決してオーガスタに惨敗したわけではなかった。最終日、スコアこそ後退したが、13番ではすばらしい2オンに成功。「気持ちよく打てた」ボールはカップに吸い込まれてイーグル! この4日間、順位がどうこうではなく「大きな経験をさせてもらいました」という。世界に挑戦する選手として、はかり知れない財産を土産にもらったというべきだろう。来年、再来年、こんどこそ優勝に絡むようなプレーが期待できそうだ。