気配りもすごい“完璧超人” アダム・スコットは将来の世界選抜キャプテン候補
「プレジデンツカップ」が米国選抜の9大会連続勝利で幕を閉じました。相手のホームで奮闘する世界選抜のチーム最年少20歳のキム・ジュヒョン(韓国)を見て、松山英樹選手が初出場した2013年大会を思い出しました。
当時も例年「ザ・メモリアルトーナメント」が行われるオハイオ州ミュアフィールドビレッジGCが舞台でしたから、毎ホールでUSAコールが響いているような感覚。ずっと耳にこびりついて夜に眠るのが大変だったくらいで、これが“アウェーの洗礼”なのかと思ったものです(笑)そして、タイガー・ウッズやフィル・ミケルソンといった超がつくスーパースターを擁する相手と対戦する緊張感も、それまで経験したことがないレベルでした。
そんな中、1番ホールで松山選手が放った3Wでのティショットを鮮明に覚えています。完璧な弾道で飛距離も抜群。僕がキャディとして経験した中では2017年「WGCブリヂストン招待」最終日18番で見せた1Wでの一打と甲乙つけがたいスーパーショットでしたね。アシスタントキャプテンとしてチーム入りし、大会中ずっとそばで支えてくれた丸山茂樹さんもビックリしていましたから。
当時、右も左も分からない僕らにとって丸山さんの存在はとてつもなく大きかったです。その丸山さんとともに、ルーキーがプレーしやすいようにといろいろ気遣ってくれたのがアダム・スコット(オーストラリア)。ダブルス戦4試合すべてでペアを組み、ウッズ組とも対戦しました。
プレー面についてはもはや説明不要の元世界ランキング1位ですが、チームミーティングや懇親会ではいつも同じテーブルを囲むようにしてコミュニケーションを深めてくれたり、とにかくメチャクチャ優しいナイスガイです。2015、17年大会でもともに戦ったとき、ランキング的には当時世界トップクラスのジェイソン・デイ(オーストラリア)がいました。ただ、常に広い視野でチーム全体を見渡して動くようなアダムの存在感は別格。最年長・42歳となった今大会も朝食会場ではペアを組む選手のテーブルに自分から足を運んで一緒に食べるようにしていると聞いて、さすがだなと感じます。
アダムのすごいところは、その繊細な気配りが対抗戦期間中にとどまらないことでしょう。2016年に「日本オープン」で優勝したときも連絡をくれましたし、世界選手権シリーズを勝ったときは「直接お祝いのメッセージを伝えたいから、ヒデキの連絡先を教えてほしい」と言ってきたり。昨年、松山選手が「マスターズ」を制したときにも、すでにチームを離れていた僕のところにまで祝福が届いて驚きました。とにかくモテる男はマメですね(笑)
初めて出たプレジデンツカップから、9年が経ちます。松山選手はチームのエースとして相手にマークされる存在になり、アダムの出場回数も世界選抜で最多10度を数えます。将来的には確実に主将を任されることになると思いますが、ここまで来たら、ミケルソンが持つ12度の大会最多記録を塗り替えてほしいところ。2019年大会のウッズがそうであったように、選手兼任のプレーイングキャプテンも面白いかもしれません。実力はもちろん、ずっとチームのために動いてきたアダムだからこそ重責を担うことができると信じています。(解説・進藤大典)