マキロイも疲労困憊 ベイヒルのハードセッティングを紐解く
ことしの「アーノルド・パーマー招待」は、あの「全米オープン」が引き合いに出されるほどの超ハードセッティングとなりました。ただでさえ深いラフが厄介なベイヒル。グリーンは日を追うごとにどんどん硬く、速くなって選手たちを翻弄。最終日のフィールド平均スコアは2年続けて「75」を超える数値まで跳ね上がりました。
優勝したスコッティ・シェフラーも、やはりサンデーバックナインはピンチの連続。追い込まれているはずの状況でも、キャディのテッド・スコットさんと2人で醸し出す雰囲気が抜群に良く、タフな戦いを楽しんでいるかのような明るい表情が印象的でした。テキサス育ちで「硬い」「速い」に加えて強い風も吹く“三重苦”は慣れている部分もあるのでしょう。そして、最大の要因は2月の「WMフェニックスオープン」で念願の初タイトルを手にしたことによって生まれた気持ちの余裕だと思います。
直近3戦2勝でフェデックスカップポイントレースのトップに立ち、世界ランクもトップ5入り。昨年決勝まで残った地元テキサスでのマッチプレーも2週後に控えていますし、4月の「マスターズ」をはじめとするメジャーでも優勝候補に挙がってくるはず。殻を破った感のある大器がどんなプレーを見せてくれるのか楽しみです。
僕がこの大会で初めてキャディをした2014年を振り返ると、ここまで難しいセッティングではなかったように思います。15年夏にグリーンの芝を張り替えた影響も一因として挙げられるのでしょうが、大会側の“思惑”も感じました。
メジャーに次ぐ格付けとなりつつある招待試合。優勝者には3年シードが付与され、世界選手権シリーズと同じフェデックスカップポイント550ptが与えられます。大会サイドもほかのレギュラーツアートーナメントと一線を画す意味でセッティングに“色”をつけている可能性はあるかもしれません。
この時期のベイヒルは風も強く、芝が乾きやすいため、非常にコンディションが変わりやすいタイミング。同じくフロリダのTPCソーグラスでPGAツアーが威信をかけて開催する「ザ・プレーヤーズ選手権」の有名な17番パー3もそうですが、グリーンが硬めに仕上げられていると、少しの風でも池に入れる選手が続出します。コース側もそれくらいギリギリを狙ってコンディションを整えてくるのです。
とはいえ、今回はさすがにロリー・マキロイも本音を漏らしていましたね。「ミスしたときにペナルティがあるのは構わないけど、良いショットが報われない」と。僕が見てきた中でも、“世界一止められる”と言っても過言ではないアイアンショットの持ち主。そのマキロイが「パンチドランカーになった気分」というのですから、どれだけハードだったかが伝わってきます。4日間を戦い抜いた選手には拍手を送りたいですね。(解説・進藤大典)